レビュー技法について
レビューとは
レビュー(review)とは
レビューとは、システム開発の工程ごとに成果物の品質を検証する活動のことです。
レビュー(review)は英語で、再検討する、論評する、検査する、審査するなどの意味を持ちます。
レビューの種類について
指定 | 説明 |
---|---|
マネジメントレビュー(management review) |
上級管理者に情報を提供することにより、進捗の確認や評価を行うレビューです。 開発プロジェクトの継続と中止、プロジェクトスコープの変更と調整、製品のリリース可否などを決定します。 |
デザインレビュー(Design review) |
設計工程で作成した仕様および仕様書に対して行うレビューです。 設計の妥当性を確認して、次工程に移行してよいか評価します。 |
ピアレビュー(peer review) |
ピアレビューとは、開発プロジェクトの関係者によって、成果物をチェックするレビューです。 ピア(peer)は「同僚」を意味する英語であり、ここでは開発を共にするチームメンバーを指します。 |
コードレビュー(Code review) |
ソースコードを対象に行うレビューです。 プログラミングの段階で行われるもので、プログラムのミスを発見する為に実施します。 |
レビューの注意点
レビューにおいては、以下の点に注意して実施しなければ、有意義な施策にならない危険性があります。
事前に目的やルールを参加メンバーに周知して、効率的な品質向上活動を目指す必要があります。
- 問題の発見を第一目的として、その場での解決の検討をしないこと。
- 大きな問題の発見を優先すること。小さな問題(誤字やサイズ違いなど)は別途のレポート報告でもよい。
- 短時間(長くても2時間以内)に終了すること。
- 個人を攻撃しないこと。
- レビュー結果を人事評価などには用いないこと。
レビュー技法
インスぺクション(Inspection)
インスぺクションとは、モデレーターが全体のコーディネートを行い、参加者が明確な役割をもってチェックリストなどに基づいたコメントをし、正式な記録を残すレビュー方法です。
ピアレビュー技法の中で最も公式性が高いレビュー方法であり、確実に記録を残すことができ、必要に応じて分析や振り返りを行います。
インスぺクションは英語で、精査、点検、検査を意味します。
インスぺクションは、3人から6人が参加して実施され、各参加者は以下の役割を持ちます
名前 | 役割 |
---|---|
モデレーター(Moderator) | 議長・司会としてインスペクション全体を運営する |
オーナー(Owner) | レビュー対象となる成果物の作成者で、インスペクションの依頼者です。 |
インスペクター(Inspector) | 評価者としてレビュー対象となる成果物の問題発見を行う |
プレゼンタ(Presenter) | ミーティングにて参加者に資料の説明を行う |
スクライブ(Scribe) | 書記としてレビューで発見された問題などを記録する |
テクニカルレビュー(technical review)
テクニカルレビューとは、技術的に認められたチームによって成果物を検査するレビュー方法です。
参加するレビューアは技術のエキスパートとしてのスキルや知見を活かして、欠陥の検出だけでなく代替案、解決案の掲示も行います。
レビュー成果物として、議事録、チェックリスト、欠陥検出のドキュメント、レポートなどを作成して、これらをマネージャへ報告するまでがテクニカルレビューの一連の流れとなります。
テクニカルレビューは、インスペクションよりはカジュアルですが、ウォークスルーよりはフォーマルです。
テクニカルレビューの各参加者は以下の役割を持ちます。
名前 | 役割 | 備考 |
---|---|---|
モデレーター(ファシリテーター) | レビューの進行管理を行い、効果的な運営を行う | 経験を積んだモデレータがレビューの進行を行うことが望ましい |
書記(記録係) | レビュー中の指摘や改善事項、問題点などの情報を記録する | |
レビューア(技術エキスパート) | 作業成果物を評価し、欠陥の検出だけでなく代替案、解決案の掲示する | 技術エキスパートや専門家であること |
レビューイ(作成者) | レビュー対象の作業成果物を提供し、フィードバックを受ける |
ウォークスルー(walk-through)
ウォークスルーとは、作成者を含めた複数人の関係者が参加して会議形式で行うレビュー方法です。
レビュー対象物の作成者が説明者になり、入力データの値を仮定して、手続をステップごとに机上でシミュレーションしながらレビューを行います。
ウォークスルーとはもともと演劇用語であり、「気楽に行う立ち稽古」という意味です。
そこから、チームメンバー自身が自主的に点検を実施することをウォークスルーと呼称されるようになった経緯があります。
その他のレビュー技法
ラウンドロビン
ラウンドロビンとは、参加者全員が持ち回りでレビュー責任者を務めながらレビューを行う方法です。
レビューのための作業を分担し、参加者全員が順番に司会者とレビューアの役を持ち回りで行うので、参加者全員の参画意欲が高まる効果があります。
回転式レビューとも呼ばれます。
パスアラウンド
パスアラウンドとは、レビュー対象となる成果物を複数のレビューアに配布又は回覧して、レビューアがコメントするレビュー方法です。
レビュー対象をメールで送信したり、グループウェアやソースコード管理ツールなどを使って共有します。
レビューアが都合のいい時間に自由にレビューできるメリットがありますが、十分にレビューが行われないまま完了扱いされてしまう危険性があります。
ピアデスクチェック
ピアデスクチェックとは、依頼者とレビューアの2人で行う形式です。
手軽にクロスチェックができるという点がメリットです。
しかし、欠陥検出力がレビューア個人のスキルに依存するため、レビュー品質が安定しない危険性があります。
アドホックレビュー(ad hoc review)
アドホックレビューとは、近くの同僚に声をかけ、必要に応じて即席で行われレビュー方法です。
管理統制がなされていない非公式のレビューであり、特にルールもなく、成果物を残す必要もありません。
アドホック(ad hoc)とは、「特定の目的のための」「限定目的の」「その場限りの」などの意味を持つラテン語表現です。
レビューに関する指標
レビュー工数密度
レビュー工数密度とは、レビューにどれだけの工数をかけているかを表す指標です。
工数密度が低い(工数が短い)場合にはレビューが不足していると推測します。
逆に、工数密度が高い(工数が長い)場合にはレビュー実施方法に課題があると推測します。
レビュー対象規模は、一般的にはLOCやFPで算出します。
レビュー工数密度 = レビュー工数 ÷ レビュー対象規模
レビュー指摘密度
レビュー指摘密度とは、レビューでどれだけの指摘を挙げられているかを表す指標です。
レビュー指摘密度が適切でない場合には、ソフトウェア品質の影響なのか、レビュー方法が適切なのか、などを確認します。
この指標は、再レビューの必要性を判断したり、後工程での品質予測を実施するなどに利用されます。
レビュー指摘密度 = レビュー指摘件数 ÷ レビュー対象規模
レビュー指摘効率
レビュー指摘効率とは、工数当たりのレビュー指摘能力を表す指標です。
この指標は、仕様書の精度やレビュープロセス成熟度などを判断することに利用されます。
レビュー指摘効率が低い場合は、仕様が適切であるか、レビューアーの体制やスキルに問題がないかを点検します。
レビュー指摘効率 = レビュー指摘件数 ÷ レビュー工数