ビジネスアナリシスについて

ビジネスアナリシスとは

ビジネスアナリシス(BA:Business Analysis)とは

ビジネスアナリシスとは、ビジネスにおけるユーザ要求を引き出して定義し、その目標を達成するための解決策を見出し、関係者間の調整を行う一連の活動のことです。
これは、企業などの組織構造や業務内容、経営戦略、ビジネス上の問題点などを理解し、潜在的な原因を特定するためにデータを収集・分析する専門的業務となります。
情報システムの開発においては、初期に行われるシステム企画や要求分析を的確に行うために必要とされる活動となります。

BABOKでは、ビジネスアナリシスは以下のように定義されます。


ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動

PMIビジネスアナリシスガイドでは、ビジネスアナリシスは以下のように定義されます。


ビジネスアナリシスは、ソリューションの実現を支援するために実行される一連の活動

ビジネスアナリストとは

ビジネスアナリストとは、ビジネスアナリシス(業務分析)を実施する専門家のことです。
ビジネスアナリストは、ビジネスニーズをもとに、価値をもたらす具体的な最適解となるソリューションを推奨する業務を行います。


プロジェクトマネージャとビジネスアナリストの関係について

ビジネスアナリストは、顧客にヒアリングして、要件定義をまとめることが主な業務です。
一方、プロジェクトマネージャーは要件定義からシステムの設計・開発を行い、システムの運用・保守まで全般に関わる業務です。
つまり両者は、要件定義以前の超上流設計において協業する関係です。

なお、過去の日本IT産業界では、プロジェクトマネージャがビジネスアナリシス業務を遂行していることがしばしばありました。
これには、プロジェクトマネジメントとビジネスアナリシスに必要な能力の分化ができていない上に、業務を個人スキルに依存していたなどの問題がありました。
近年では改善してきており、それぞれ専門職としての役割を果たす人員を調達して、プロジェクトの成功を高める考え方が広まりつつあります。


BABOKについて

BABOK(Business Analysis Body Of Knowledge)とは

BABOKとは、IIBA(International Institute of Business Analysis)が発行しているビジネスアナリシスの知識体系ガイドのことです。
このガイドは、ビジネスアナリシスのベストプラクティスを体系化したもので、その知識体系はグローバルスタンダードとして確立されています。
なお、BABOKは「バボック」または「ビーエーボック」と読みます。

IIBAは2003年に設立されたカナダのトロントに本拠を置く国際非営利団体です。
2005年に「BABOK 1.4」、2009年に「BABOK 2.0」、2015年「BABOK 3.0」が発行されました。
2024年時点において、2015年11月に日本語翻訳された「BABOK® Version 3.0」が最新版となります。


コア・コンセプト(主要コンセプト)

ビジネスアナリシスの業務のコアとなる次の6つの用語を「コア・コンセプト」と言います。
それぞれ次のように定義されています。

名前 説明
チェンジ ニーズに対応して変える行為。
エンタープライズのパフォーマンスを改善するためのもの。
ニーズ 対処すべき問題や機会。
ニーズがステークホルダーの行動意欲を駆り立ててチェンジを引き起こすこともあれば、チェンジがニーズを生み出すこともある。
ソリューション あるコンテキストにおいて、一つ以上のニーズを満たす具体的な方法
価値 あるコンテキストにおける、ステークホルダーに対する値打ち、重要性、有用性
ステークホルダー チェンジ、ニーズ、ソリューションと関係を持つ個人またはグループ
コンテキスト チェンジに影響を及ぼし、チェンジから影響を受ける状況。

BABOKが定義する要求

BABOKでは、要求を4種類に分類しています。
顧客の要求を分類することで、優先順位を検討して、対応するべき真の要求を決定します。

要求の種類 説明
ビジネス要求 経営戦略や情報化戦略などから求められる要求であり、エンターブライズアナリシスの活動で定義している。
ステークホルダ要求 利用部門や運用部門などから個別に発せられるニーズであり、要求アナリシスの活動で定義している。
ソリューション要求 組織・業務・システムが実現すべき機能要求と非機能要求であり、要求アナリシスの活動で定義している。
移行要求 新システムへのデータ変換や要員教育などに関する要求であり、ソリューションのアセスメントと妥当性確認の活動で定義している。

知識エリア

BABOKでは、ビジネスアナリストが行う30のタスクを分類した6つの知識エリアを定義しています。
これに基礎コンピテンシを加えて7つの知識エリアと定義することもあります。

名前 説明
戦略アナリシス 組織(エンタープライズ)の現状(AsIs)を把握して、将来の状態(ToBe)に至るチェンジに関する戦略を定義する。
引き出しとコラボレーション 潜在的なニーズや要求を引き出す。
要求アナリシスとデザイン定義 ニーズを引き出し、要求としてモデリングし、解決策をもとに業務設計やシステム設計を推奨する。
要求のライフサイクルマネジメント 要求の引き出しから実現までの全過程をマネジメントする。
ソリューション評価 ソリューションにによって得られた価値やパフォーマンスを評価する。
ビジネスアナリシスの計画とモニタリング ビジネスアナリシス活動を計画して、モニタリング・フィードバックを行う。
ここでのアウトプットは、他の知識エリアの活動のインプットとなる。
基礎コンピテンシ ビジネスアナリストに必要な基礎的な知識、スキル、行動特性です。

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