ももの知恵の樹

ユーザビリティの設計

ユーザビリティとは

ユーザビリティ(usability)とは

ユーザビリティとは、製品やサービスの「使いやすさ」や「有効性」などを意味します。
より厳密にいえば、国際標準化機構(ISO)が制定する国際規格「ISO9241-11」においては、ユーザビリティは以下のように定義されています。


Extent to which a product can be used by specified users to achieve specified goals
with effectiveness, efficiency, and satisfaction in a specified context of use.

特定の利用状況において、特定の利用者によってある製品が指定された目標を達成するために用いられる際の、
有効性、効率性、利用者の満足度の度合い。

ユーザビリティとアクセシビリティの違いについて

アクセシビリティ(Accessibility)とは、利用者が製品やサービス円滑に利用できることを意味します。
この単語は、「近づきやすさ」、「利用のしやすさ」、「便利であること」などと訳されて、ユーザビリティと似たような概念となります。
ただし、アクセシビリティはユーザビリティより幅広い利用状況、多様な利用者を前提としている点が特徴です。

つまり、ユーザビリティは、ターゲットを絞り込むことで、より便利に使えることを追求することです。
これに対してアクセシビリティは、ターゲットを限定せず、老若男女に関係なく誰もが便利に使えることを追求することです。


ニールセンのユーザビリティ10原則

ヤコブ・ニールセン(Jakob Nielsen)とは

ヤコブ・ニールセン氏はデンマーク出身のWebユーザビリティの専門家であり、ユーザビリティ研究の第一人者といわれています。
ニールセン氏は、UIのユーザビリティは、以下の5つの特性からなる、多角的な構成要素を持っている提唱しています。

要素 説明
学習のしやすさ(Learnability) システムはユーザーがすぐ使い始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない。
効率性(Efficiency) 一度学習すれば、後は高い生産性を上げられるよう、効率的な使用を可能にすべきである。
記憶のしやすさ(Memorability) ユーザーがしばらく使わなくても、またすぐ使えるように覚えやすくしなければならない。
エラー発生率(Errors) エラー発生率を低くし、エラーが発生しても簡単に回復できるようにしなければならない。
また、致命的なエラーが起こってはいけない。
主観的満足度(Satisfaction) ユーザーが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できなければならない。


ユーザビリティ10原則

ニールセン氏が1999年に出版した著書「Designing Web Usability: The Practice of Simplicity」で提唱された10原則は、ユーザビリティの基本指針として広く知られています。

No. 原則 説明
1 システムの状態を可視化する
(Visibility of system status)
ユーザーに対してシステムの現在の状態や進行中のプロセスを明確に可視化すること。
(例)ローディングインジケーターやプログレスバーを表示して、処理状態を表示する。
2 システムと現実世界を一致させる
(Match between system and the real world)
システムの操作や用語がユーザーの日常生活や既存の知識に合致していること。
(例)現実世界にあるボタンと近い形状にすることで、ユーザーに押せることを認識させる。
3 ユーザーに操作の主導権と自由を与える
(User control and freedom)
ユーザーが誤った操作をした場合でも、元の状態に戻したり、操作を取り消せるようにすること。
(例)Undo機能、キャンセルボタン、前のページに戻るボタンなどを適切に配置する。
4 一貫性と標準化を保つ
(Consistency and standards)
デザインやインターフェースに一貫性を持たせることと業界標準に従うこと。
(例)同じアクションを行うボタンは色や形状を統一すること。赤はエラー系で使うこと。
5 エラーを予防する
(Error prevention)
ユーザーが誤った操作をすることを防ぐこと。
(例)入力フォームに対してバリデーション機能を備えることで、誤入力を予防する。
6 記憶しなくても、見て理解できるようにする
(Recognition rather than recall)
ユーザーが操作や関連情報を覚える必要がなく、直感的に認識できるデザインとすること。
(例)不要な情報や選択肢を削ぎ落としたデザインにする。
7 柔軟性と効率性を持たせる
(Flexibility and efficiency of use)
柔軟性やカスタマイズ性のあるデザインとすること。
(例)ユーザーが任意にカスタマイズできる画面やショートカットなどの設定機能を設ける。
8 最小限で美しいデザインを施す
(Aesthetic and minimalist design)
美的でシンプルなデザインを採用すること。
(例)過剰なエフェクトを避け、目的に合ったシンプルなアニメーションを取り入れる。
9 ユーザーによるエラー認識、診断、回復をサポートする
(Help users recognize, diagnose, and recover from errors)
エラーが発生した場合、その原因と対処方法を明確に伝えること。
(例)適切なエラーメッセージを表示させるとともに、エラー箇所へフォーカスを移動する。
10 ヘルプとマニュアルを用意する
(Help and documentation)
ユーザーが問題を解決するためのヘルプやマニュアルを提供すること。
(例)オンラインヘルプ、FAQ、チュートリアル、使い方ガイドなどを充実させる。


8つのゴールデンルール(eight golden rules of interface design)

8つのゴールデンルール(黄金法則)とは

8つのゴールデンルールとは、アメリカの計算機科学者であるベン・シュナイダーマン(Ben Shneiderman)氏が著書『ユーザーインタフェースの設計 やさしい対話型システムへの指針』(1986年初版)で提唱した、UIデザインにおける法則のことです。
この法則は、生産的でストレスのない、優れたUIをデザインの指針として、様々な企業や組織から参考にされ続けています。

No. 法則 説明
1 一貫性を保つ
Strive for consistency
色、フォント、スタイルを統一して、ボタンやメニューなどの操作感に一貫性を持たせること。
一貫性があるUIは、ユーザーに快適性や親しみやすさを与えることができます。
2 ヘビーユーザーがショートカットを使用できるようにする
Enable frequent users to use shortcuts
より速くタスクを完了する方法を提供すること。
経験を積んだユーザーはより迅速かつ効率的に操作することを望みます。
3 有益なフィードバックを提供する
Offer Informative Feedback
ユーザの行動に対して、分かりやすく適切なフィードバックを短時間で表示すること。
(例)ローディング画面やプログレスバーを表示する。ウィザード形式で残作業を可視化するなど。
4 完了を伝えるダイアログを設計する
Design Dialog to Yield Closure
作業を完了した際には、その操作がどのような結果をもたらしたかをユーザに示すこと。
ユーザーが作業を完了した際に、情報をフィードバックすれば、ユーザーは達成感や安堵感を得られます。
5 簡単なエラー処理を提供する
Offer Simple Error Handling
何が問題なのか、どうしたら解決できるのかをすぐに理解できるエラー内容を表示すること。
ユーザーが素早く簡単に問題を解決できるように、直感的でわかりやすい指示を表示します。
6 簡単にやり直しできるようにする
Permit easy reversal of actions
"取り消し(undo)"と"やり直し(redo)"を提供すること。
エラーの取り消しができると知らせることで、ユーザーの不安を解消します。
7 内部統制をサポートする
Support Internal Locus of Control
システム内部の動きや状況をユーザが判るようにすること。
システム都合で強要する操作を減らし、ユーザーが主導権を持って選択、操作できるようにします。
8 短期記憶の負担を減らす
Reduce Short-Term Memory Load
人間の短期記憶には限度があるので、表示は簡潔にすること。 選択肢を提示して操作を要求するなど、ユーザに記憶を強要しない設計にします。


デザインの敗北

デザインの敗北とは

デザインの敗北とは、ユーザーに誤解や混乱を与えて、本来の目的を果たせていないデザインのことです。
特に、ビジュアルは美しく構成されているにもかかわらず、ユーザーの利便性に欠けるデザインを揶揄する場合に用いる言葉です。

敗北決定の基準は、施設の管理者などが目的を正しく伝えるためにデザイン性をぶちこわすような「付記」をした場合となります。
例えば、プラカードを置いている公共物やテプラまみれになっているコーヒーメーカーなどは、敗北しているデザインと見なします。



デザインを学ぶための名著・参考資料について

誰のためのデザイン?(新曜社)

『誰のためのデザイン?』は人間中心設計のアプローチを提唱した認知科学者「ドナルド・A・ノーマン」氏の著書です。
デザイナーの必読書と言われており、人と機械が共生するための条件を深く考察した名著と評価されています。


デザインのデザイン(岩波書店)

『デザインのデザイン』は武蔵野美術大学で教授をされている「原 研哉」氏が2003年に出版した著書です。
デザイン関係者からは必読書と言われており、デザインとは何か?という問題を考えさせられる名著と評価されています。



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