動的システム開発手法について

動的システム開発手法(DSDM: Dynamic Systems Development Method)の概要

動的システム開発手法とは

ダイナミック・システム開発メソッド(以下DSDM)とは、プロジェクトのライフサイクル全体に焦点を当てた開発手法です。
DSDMは、8つの原則、ライフサイクルと製品、役割と責任、いくつかのベストプラクティスのテクニックで構成されます。

DSDMは、アジャイルマニフェストが作成されるより以前から稼働している開発手法であり、反復的かつ段階的なスケーリングを含んだアプローチはアジャイル開発へ大きな影響を与えました。
その特徴として、DSDMはビジネス目標を達成するために人々が効果的に協力することを重視している点が挙げられます。


DSDM アプローチ

DSDM アプローチは「プロジェクトが明確なビジネス目標に向かって足並みを揃えた時に、最高のビジネス価値は生まれる。」という哲学に基づいています。


“Best business value emerges when projects are aligned to clear business goals,
  deliver frequently and involve the collaboration of motivated and empowered people”

DSDMコンソーシアムとは

DSDMコンソーシアムとは、1994年に、独立したフレームワークを共同で開発・推進する目的として、大手企業が共同して設立した組織です。
DSDMコンソーシアムは、RAD(Rapid Application Development)をベースとして拡張し、理念と原則とプラクティスを加え、新しいフレームワークとしてDSDMを1994年に発表しました。
2006年には、「DSDM パブリック バージョン4.2」を発表し、個人でも閲覧および使用できるようになりました。(再販は禁止)
なお、2016 年に、DSDM コンソーシアムは「アジャイル ビジネス コンソーシアム」に名前を変更し、引き続きDSDMフレームワークを所有し、管理しています。


DSDMの8つの原則

Focus on the business need(ビジネス要求に焦点を当てる)

プロジェクトに関して行われるすべての決定は、プロジェクト全体の目標である「ビジネス要求」と一致している必要があります。
つまり、プロジェクトは目的を達成するための手段であり、長期的なビジネス目標に貢献する必要があります。
そのためにも、ビジネスの優先順位を理解し、有効なビジネスケースを作成して、継続的なビジネスコミットメントを実施します。


Deliver on time(納期通りに提供する)

プロジェクトの主な目標および成功要因の 1 つは、納期どおりに納品することです。
そのために「タイムボックス」を使用して、優先順位に焦点を当て、納期を予測します。


Collaborate(協力)

DSDMでは、ビジネス担当者を含む全ての関係者との協力を重視します。
協力により、知識や経験を共有することで、チームが高いパフォーマンスを発揮できるようになります。


Never compromise quality(品質に妥協しない)

DSDMでは、最初に品質レベルを設定して、すべての作業はこの合意されたレベルの達成を目指す必要があります。
そのためにも、成果物を早期にテストし、継続的にレビューを実施します。


Build incrementally from firm foundations(確固たる基礎を築いてから漸進的に構築する)

チームは、開発に取り組む前に、まず解決すべきビジネス上の問題の範囲を理解する必要があります。
そして、チームは計画に沿った作業を確実に行うために、ビジネス上の優先度を考慮して、適切なタイミングで適切な量の作業を行うように努めます。


Develop iteratively(反復的に開発する)

チームはフィードバックを迅速に実装し、プロジェクトの仕様とニーズの継続的な変化に適応します。
プロジェクト環境は変化することが多いため、時間の経過とともにチームの認識とプロジェクトの成果物を進化させることが重要です。


Communicate continuously and clearly(継続的で明確なコミュニケーションをとる)

DSDMは、プロジェクトを確実に成功させるためには、明確なコミュニケーションが重要であることを認識しています。
コミュニケーションとその有効性を向上させることを目的として、スタンドアップ・ミーティング (スクラム)、ファシリテーション型ワークショップ、ビジュアル・コミュニケーションなど、フレームワークの方法論が使用されます。


Demonstrate control(プロジェクトコントロールを実証する)

チームリーダーまたはプロジェクトマネージャーは、すべてのチームメンバーにプロジェクトの進捗状況とその管理状況を実証し、伝達します。
状況の最新情報をチームメンバーに向けて公開することで、プロジェクトの透明性を確保します。


DSDMの技法とプラクティス

タイムボックス(Timeboxing)

タイムボックスとは、プロジェクト全体を期限と予算を持つ小さなタスクに分割する手法です。
最も重要な要素に優先順位を付けて、リソースを節約しながら効果的な製品を確実に提供します。


Facilitated Workshops

ファシリテイテッド・ワークショップとは、関係者が集まり、進捗状況、懸念事項、目標について話し合う部会のことです。
この会議は通常、オープンなコミュニケーションとチームワークを促進します。


MoSCoW分析

MoSCoW分析(MoSCoWメソッド, モスクワ分析)とは、ビジネスやプロジェクトの優先順位を付けて整理する手法のことです。
要件を「Must」「Should」「Could」「Won’t」の4つの分類に評価して優先順位を決め、関係者と共通の認識とするものである。

項目 説明
Must have 対応必須。ソリューションの基本となる要件。
Should have 持つべきもの。ビジネス・ソリューションにとって重要なこと。
Could have 望ましいが必須ではない。プロジェクトの主な価値ではないが、対応することでユーザー体験が向上すること。
Won’t have 対応不要。重要度や費用対効果が低く、現時点では取り組むべきではないこと。

DSDMの役割と責任

DSDMでは、プロジェクト成功の重要な要素として、適切なコラボレーションとチームメンバーとの効果的な作業方法を挙げています。
これを達成するために、DSDMフレームワークは、プロジェクトの全員に明確な役割と責任を割り当てます。

※なお、具体的な役割については、DSDMのバージョンによって大きく変更されています。
最新版のDSDMを確認ください。

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