フィドルの指板ポジションについて
指板ポジションの基礎知識
指板ポジションとは
指板ポジションとは、フィドルの弦を押さえる位置のことです。
どの場所を押さえるとどのような音が鳴るかは、チューニングと弦長によって決まります。
フィドルのチューニングとは
フィドルのチューニングは、基本的にはバイオリンと同じく、4本の弦を「G, D, A, E」に調弦します。
ただし、フィドルでは、ユニークなサウンドを狙ったり、共に演奏する楽器構成を考えて、独特なチューニングを行うことがあります。
例えば、EAEAやEADA、DADDなどのチューニングをとる名曲がいくつも存在しています。
弦長とは
弦長とは、ナット(上駒)から駒までの弦の長さ、つまり弦が振動して音を出す部分の長さを指します。
フィドル(バイオリンを含めて)の弦長は、一般的に325mm~330mmが基準とされています。
とはいえ、個体によってばらつきがあり、やや小振りの個体では弦長が324mm、大きな個体だと332mmなどがあります。

ポジションの確認方法
基本ポジション
フィドルの基本ポジションは以下の通りです。
非常に大まかに指板の端(ナット)からの距離を測ると、平均的には以下になります。
1stは約3.5cm、2ndは約5cm、3rdは約8cm、4thは約11㎝、5thは約13.5㎝、6thは約14.5㎝。

フラジオレット(ハーモニクス)によって把握する方法
フラジオレットとは、倍音奏法とも呼ばれ、左手の指を弦に軽く触れて弾くことで、口笛のような音色を出す奏法のことです。
以下のように弦長の2等分、3等分、4等分という節目でフラジオレットを奏でることができます。
このテクニックを利用することで、弦を押さえるポジションを割り出すことができます。
例えば、フィドルの弦長が「325mm」である場合、弦長のちょうど中間点にあるフラジオレットは「162.5mm」となります。
これにより、ナットから弦長の2等分(1オクターブ分)の物理的な距離を把握することができます。
フォームとポジションを組み合わせて、指板上の押さえる位置を確認することができます。
例えば、1オクターブ上のフラジオレットを演奏するとき、フォームは以下のようになります。
・小指で鳴らした時は4thポジション
・薬指で鳴らした時は5thポジション
・中指で鳴らした時は6thポジション
・人差指で鳴らした時は7thポジション
1/3(弦長の3等分)のフラジオレットを演奏するとき、フォームは以下のようになります。
・小指で鳴らした時は1thポジション
・中指で鳴らした時は3thポジション
1/4(弦長の4等分)のフラジオレットを演奏するとき、フォームは以下のようになります。
・薬指で鳴らした時は1thポジション
・人差指で鳴らした時は3thポジション
補足
フィドルの音律とは
フォドルでは、音律について小難しいことは考えません。
奏者の気分や周りの演奏に合わせて、綺麗に聴こえる音を選びます。
一般的に、バイオリンは、メロディラインを演奏するときはピタゴラス音律で弾き、伴奏やアンサンブルラインは純正律で弾きます。
さらに、ピアノやギターなどの平均律の楽器と合奏する際は、それらに合わせて平均律の音を選びます。
実のところ、バイオリン奏者も音律を明確に意識するのではなく、もっとも綺麗に聴こえる音を楽曲毎に選んでいるといいます。
フィドルの基準音は440Hz?442Hz?
フィドルの基準音は、一般的には「A=440Hz」を設定していることが多い様子です。
基本的にはアンサンブルを構成する楽器に合わせて適宜に基準音を設定しているといいます。
その上で、演奏会場によっては音抜けをよくするために、AとE線だけ少し高めにチューニングとすることもあるようです。
日本でのバイオリンの標準音は「A=442Hz」で設定するのが主流です。
その理由は、少し高音にした方がより明るく、華やかな印象に聞こえるためです
日本のオーケストラ自体が「A=442Hz」を基準とすることが多く、演奏ホールにあるピアノもA=442Hzに調律されていることが多々あります。
一方、アメリカやイギリスなど英語圏のオーケストラでは「A=440Hz」でピッチを合わせることが主流となっています。
また、ドイツ語圏のオーケストラでは「A=444Hz」でピッチを合わせることがあるようです。
なお、標準音は、時代によって変わっているといわれています。
例えば、バロック時代(18世紀前半:バッハやヴィヴァルディなど)は「A=415Hz」が主流だったようです。
その後の18世紀後半(モーツァルトなど)は「A=421.6Hz」、18世紀末~19世紀初頭(ベートーヴェンなど)は「A=430H」zだったといわれています。
バイオリンの押さえる位置は個体毎に異なる?
バイオリンは個体毎に大きさが微妙に異なるので、全てのバイオリンで押さえる場所が完全に一致することはありません。
また、音の響くポイントも個体によって異なるので、耳と感触で適切なポジションを見つける必要があります。