フィドルについて

フィドルの基本情報

フィドルとは

フィドルとは、民俗音楽で使われるバイオリンのことです。
楽器としては、クラシック音楽で利用するバイオリンとまったく同一の楽器です。
要するに、バイオリン奏者が弾くとバイオリンと呼び、フィドル奏者が弾くとフィドルと呼びます。


フィドルの演奏方法とは

フィドルでは、楽器の持ち方、構え方に特に決まりはありません。
例えば弓の持ち方を挙げてみると、クラシックバイオリンの世界では(いくつかの流派はありますが)変な癖がつかないように厳しく矯正されます。
しかし、フィドルは、弓の持ち方は演奏者によって様々であり、正しい持ち方というのは存在しません。


フィドルの格言

「バイオリンは歌う、しかしフィドルは踊る」
クラシックバイオリンでは音色や正確性だけでなく、作曲者の意図の再現性などが演奏において重視されます。
しかし、フィドルでは"演奏者"の個性やノリが演奏において重視されます。

「フィドルにビールをこぼしてもだれも泣くものはいない」
クラシックバイオリンとは異なり、フィドルは高価な楽器が使われることが多くありません。
フィドルは楽器の質より演奏者の個性を重視しています。


フィドル(アイルランド音楽)のリズムとは

リズム一覧

リズム名 説明
リール(Reel)

リールとは、4分の4拍子で表される快速なダンス音楽のリズムのことです。
アイルランドで最もよく弾かれているがこのタイプの曲です。
リールにおけるフィドルの演奏スタイルは、1ボーイング1音を基本として、弓のアタックが強くスピード感のある演奏をします。

ホーンパイプ(Hornpipe)

ホーンパイプとは、4分の4拍子ですが、1拍目と3拍目のアクセントが強くなる特徴のリズムのことです。
「タッカ、タッカ」という跳ねたリズムになります。
ジャズにおける、スウィングやシャッフルのようなリズムとなります。

ジグ(Jig)

ジグとは、8分の6拍子のリズムのことです。
ジグにはダブルジグ (double jig: 6/8拍子)、シングルジグ(Single jig: 12/8拍子)、スリップジグ (slip jig: 9/8拍子) の3種類があります。
通常「ジグ」といった場合には「ダブルジグ」のことを指します。

ジグ(ダブルジグ)の曲は、楽譜上では8分音符3個が1ユニットとなります。
ユニットの最初の音にアクセントを付けて、1ボーイング1音を基本として歯切れ良く弾き、時折スラーも織り混ぜて軽快なリズムで演奏します。

ポルカ(Polka)

ポルカとは、4分の2拍子で演奏される明るく楽しいダンス曲のリズムのことです。
ポルカは、1拍は8分音符2つに分けて、それぞれ2音目にアクセントを付けます。

マズルカ(Mazurka)

マズルカとは、ポーランドの民族舞曲で用いるリズムのことです。
マズルカは、3/4拍子(1小節に4分音符が3つ)のリズムで、2拍目にアクセントを付けます。

ハイランド(Highland) ハイランドは、アイルランドのドネゴール州で演奏される4分の4拍子のダンス曲です。
エア(Air)/スローエア(Slow Air) エア(スローエア)は、歌詞の付いた歌の曲を楽器で演奏したものです。
エアには、ダンス曲ではなく聴くための作品が多くあります。


フィドルの演奏テクニックと特徴

弓の使い方

フィドルでは、弓の握り方も自由であれば、弓の使い方も自由であり、それらは奏者の表現次第です。
例えば、アップテンポな曲ではスピード感を出すために、弓の真ん中から弓先の間を頻繁に使うことがあります。
バイオリンのように弓全体を使ってしなやかに弾くような演奏はエアなど極一部となります。


開放弦の多用

フィドルでは、開放弦を積極的に使います。
バイオリンはできるだけ各音にビブラートをかけるため、開放弦を避けて演奏しようとします。
一方フィドルは、スピード感を出したり、ニュアンスを出すために開放弦の音を入れていきます。


カット (Cut)とは

カットとは、8分音符が2つ以上続くときに装飾音を入れる技術です。
音と音を「分割」するために使うので「カット」といいます。
1の指を押さえた状態から、2の指や3の指で弦を軽くはじく感覚で音を装飾します。



グレースノート(Gracenote)とは

グレースノートとは、前打音とも呼ばれ、音の始まりの前に入れる装飾(グレイス)する音のことです。
クラシック音楽では装飾音符と呼びます。
連続した2音ではなく単音の前に入れるカットのことをグレースノートと呼ぶこともあります。



ロール (Roll)とは

ロールとは、フィドル特有の装飾音です。
ロールは5音で構成され、基本の拍子を変えずに、リズミカルで滑らかに弾きます。
一般的には、5音の最初の音を長めに取り、次の3音を短くまとめ、最後に主音を弾く流れとなります。

ロールを示す記号は以下の通りです。


これを実際の音に直すと、以下の音符になります。



トリプレット(Triplet)とは

トリプレットとは、「三連符」の意味です。
アイリッシュフィドルではロールの記号が付いたところを単音の三連符で弾くのが一般的な使い方です。
トレブルと呼ばれることもあります。


グリッサンド(glissando)とは

グリッサンドとは、指板の指を滑らせて音程を変える奏法です。
「ピッチベンド」や「スライド」と呼ぶこともあります。(スライドと呼ぶと、フィドルではリズムのほうと混同してしまうので、グリッサンドと呼ぶことのほうが多いです)。


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