アーンドバリューマネジメント(EVM: Earned Value Management)について
アーンドバリューマネジメントとは
アーンドバリューマネジメントとは
アーンドバリューマネジメント(以下 EVM)とは、プロジェクトの進捗を時間ではなくコストで管理するプロジェクト進捗管理手法です。
EVMは、予定(プロジェクトの全作業)と実績(達成作業量)を金銭価値に置き換えて、金額ベースで比較して進捗管理を実施します。
また、EVMは現在の進捗状況の分析だけでなく、プロジェクトの今後の予測値を求める手段も提供する管理手法です。
EVMのメリット
EVMはスケジュール進捗とコスト管理を同時に実施するため、プロジェクトの状況が把握しやすい点が特徴です。
また、コストに基づいた進捗報告は、客観的な事実として扱えるため、正確な進捗管理につながります。
EVMの歴史
EVMは、1967年に米国防総省が調達規則の一部として制定した「コスト/スケジュール管理システム基準 (C/SCSC) 」が元となっています。
この管理手法は、1980年代に建築業界やエンジニアリング業界において少しずつ取り入れられて、徐々に様々な業界に広まっていきました。
その後、1998年に「ANSI EIA 748-A 標準」として規格化され、様々な業界で使用されるようになりました。
EVMの基本計測値
EVMの基本計測値の図解
PV(Planned Value:計画価値)
PVとは、特定の時点までに完了すべき作業の予算コストのことです。
計画予算、ベースラインとも呼ばれます。
例えば、納期1年で予算総額500万円のプロジェクトがあるとします。
月別作業量を均等にした場合、プロジェクト開始から半年経過した時点でのPVは「250万円」となります。
この金額を基準値として定期的に作業の進捗を確認します。
AC(Actual Cost:実コスト)
ACとは、その時点までに実際に発生したコストのことです。
実績値とも呼ばれます。
例えば、納期1年で予算総額500万円のプロジェクトがあるとします。
プロジェクト開始から半年経過した時点でのACが「400万円」であれば、予算を超過している可能性があるため、早急に状況を確認する必要があります。
EV(Earned Value:出来高)
EVとは、その時点までの出来高のことです。
達成価値とも呼ばれ、ある時点において完了している工程の予算コストの合計値を表します。
例えば、納期1年で予算総額500万円のプロジェクトがあるとします。
プロジェクト開始から半年経過した時点で、実際の進捗は40%、発生したコスト(AC)が400万円だったとします。
この時、EVは500万円×0.4(進捗40%)で200万円になります。
進捗40%の時点で、EVが200万円に対してACが400万円なので、現状のままではコストオーバーが深刻化する可能性が高いと判断します。
BAC(Budget At Completion:完成時総予算)
BACは、計画時に定めたプロジェクト完了までの予算の合計のことです。
計画が順調に進んだ場合にプロジェクト全体で要する費用であり、PVの合計値を表しています。
すべてのプロジェクトは、基本的にBACを達成するように進行されます。
予算管理の指標
EVMの予算管理指標の図解
SV(Schedule Variance:スケジュール差異)
SVは、ある時点までのスケジュールの進捗状況を知るための指標です。
値が正の場合は計画よりも早く進んでいて、負の場合は遅延が発生していることになります。
SV = EV - PV
CV(Cost Variance:コスト差異)
CVは、計画したコストと実際に発生したコストの差異を知るための指標です。
値が正の場合はコストが予算内に収まっていることを示し、負の場合は予算オーバーしていることになります
CV = EV - AC
SPI(Schedule Performance Index:スケジュール効率指標)
SPIは、スケジュールが計画通りに進行しているかを知るための指標です。
値が正の場合は計画よりも早くタスクが完了していることを示し、負の場合は遅延が発生していることになります
SPI = EV ÷ PV
例えば、出来高が400万円で計画値が500万円の場合、SPIは400万円÷500万円で「0.8」となります。
SPIの値が1より小さいため、プロジェクトが予定より遅れていると判断します。
CPI(Cost Performance Index:コスト効率指標)
CPIとは、予測されたコストどおりに進行しているかを知るための指標です。
値が正の場合は計画よりも少ないコストで進捗していることを示し、負の場合は想定以上のコストが発生していることになります
CPI = EV ÷ AC
例えば、出来高が500万円で実コストが400万円の場合、CPIは500万円÷400万円で「1.25」となります。
CPIの値が1より大きいため、予定よりも少ないコストで進捗していると判断します。
プロジェクト予測の指標
EVMの予測指標の図解
ETC(Estimate to completion:残作業コスト予測)
ETCは、現時点でまだ終わっていない作業にかかる予算を予測するために指標です。
完成時の総予算(BAC)と実際の出来高(EV)の差額から、プロジェクト完了までに必要な作業量を金額換算します。
ETC =(BAC - EV)÷ CPI
例えば、BAC(完成時の総予算)が500万円、EV(実際の出来高)が200万円、CPI(コスト効率指数)が0.5の場合、
(500万円-200万円)÷0.5=600万円(ETC)となります。
つまり、プロジェクト完了までに残り600万円分の作業量が必要という計算になります。
EAC(Estimate at completion:完了時コスト予測)
EACは、プロジェクト完了までにかかると予測されるコストの合計を表すための指標です。
プロジェクトの途中段階で、プロジェクトの総予算を予測するために使います。
EAC = AC + ETC
例えば、プロジェクト半年時点でAC(実際のコスト)が400万円、ETC(残作業コスト予測)が600万円であれば、 EACは1000万円となります。
VAC(Variance at completion:完了時コスト差異)
当初予定していた総予算と、完了時のコスト予測(EAC)の差額を表すための指標です。
つまり、プロジェクト完了までに必要な当初の総予算と、現時点で算出した最終的な予算の差異を見るために使います。
この数値が正の場合、現時点でのEAC(完成時の予算見積)がBAC(完成時の総予算)よりも少ないため、コストは予測内であることを示します。
数値が負の場合には、予測よりもコストがかかっていることを示しています。
VAC = BAC - EAC
その他の指標
TCPI(To-Complete Performance Index:残作業効率指数)
TCPIは、進行中のプロジェクトのパフォーマンスを見積もるための指標です。
つまり、見積もられた残作業量について、残予算を考慮した作業効率を決める数値を表します。
TCPI = (BAC – EV) ÷ (BAC – AC)