ボトムアップ見積り法(Bottom-Up Estimating)について

ボトムアップ見積り法とは

ボトムアップ見積り法とは

ボトムアップ見積り法とは、プロジェクトの作業を見積りが可能な単位を分解して、それぞれの作業の見積りを積み上げて全体の見積りを出す手法です。
洗い出した個々の作業と金額が1対1の関係で結ばれているので、信頼性の高い見積りを出すことができます。


ボトムアップ見積り法の分類や呼び方について

ボトムアップ見積り法のことを、WBS法、標準タスク法、標準値法などと呼ぶことがありますが、どうやらここに明確な定義や分類は決まっていない様子です。
見積り工数を算出するための方法論の違いにより、その呼び方を変えることがあるように見受けられますが、突き詰めればいずれの方法でもWBSを作成するため、方法に大差ないといえます。
海外では、主にBottom-Up Estimatingといおうキーワードを用いることが多い様子です。
なお、IPA(情報処理推進機構)はWBS法やボトムアップ見積り法ではなく、標準タスク法と呼称しているようです。


ボトムアップ見積り法の方法論

WBS法(WBS積算法)

WBS法とは、WBS(Work Breakdown Structure)に基づいて、作業工数やコストの見積りに用いる見積り手法です。
WBSの最小単位であるワークパッケージや、さらに作業を詳細化して分割したアクティビティから工数とコストを予測して算出します。

WBS法では、どのようにして工数やコストの具体的な数字を算出するのかは明示されていません。
自社の開発能力を基準にしたり、プライスツーウィン法(顧客の予算を基にした見積もりを行う手法)を用いるなど不定な数値になりやすいため注意が必要です。


標準タスク法

標準タスク法とは、WBS(Work Breakdown Structure)に基づいて,成果物単位や処理単位に工数を見積もり,ボトムアップ的に積み上げていく方法です。
工数を見積もりにおいて、各作業の複雑度や規模に応じてあらかじめ設定されている「標準工数」を各作業に割り当てて、工数とコストを算出します。
また、場合によっては、その作業特有と思われる複雑さを考えた係数を掛け合わせて算出することもあります。

例えば、下記条件の作業に対して、下記の標準作業日数を用いて標準タスク法で工数を見積ると、
・小規模かつ複雑度が単純の作業が30
・中規模かつ複雑度が普通の作業が40
・大規模かつ複雑度が普通の作業が20
・大規模かつ複雑度が複雑の作業が10
80人日=12(30x0.4)+36(40x0.9)+20(20x1.0)+12(10x1.2)となります。



標準値法

標準値法とは、単位作業項目に適用する作業量の「基準値」を決めておき、作業項目を単位作業項目まで分解し、基準値を適用して算出した作業量の積算で全体の作業量を見積もる方法です。
標準値には、過去の開発経験値を基にした生産性の標準値を用います。

標準値法と標準タスク法に明確な区別はないようです。
標準値についても、業界標準という指針もなく、各企業の独自算出値が用いられるます。


ボトムアップ見積り法のメリット

精度の高い見積書が作成できる

ボトムアップ見積り法では、プロジェクトで必要な作業と成果物を全て洗い出してから工数を見積もるので、抜け漏れを防ぎやすくなります。
プロジェクトの各構成要素と金額が1対1の関係で結ばれているので、見積り額の精度を高めた見積りを出すことができます。


顧客に対して説得力のある数値を提示できる。

ボトムアップ見積り法では、作業ごとに一定の基準で見積もるため、客観的数値を算出できます。
顧客から説明を求められた場合に、作業内容と金額を提示することができるため、説得力のある説明ができます。


ボトムアップ見積り法の注意点

WBSの作成が前提となる

ボトムアップ見積り法は、WBSの完成が前提となります。
つまり、プロジェクトの初期段階ではこの手法を利用することができません。
なぜなら、作業を分解すること自体が設計や分析作業に該当するため、ある程度の工程が進まないと見積りの算出自体ができません。
要件が未定の箇所が多い案件では、精度の低い見積りしか算出できないので注意が必要です。


見積り結果が高く出る

ボトムアップ見積り法は、見積り結果が高目に出ると言われています。
理由としては、現時点で仕様の未定箇所は作業を過度に分割しておいたり、分解した構成要素ごとにそれぞれに多めにバッファを持たせるなど、スケジュール的な余裕を多めに確保するため、これを積み上げると見積りが膨らむ傾向もあります。


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