変更管理（Change Control）について

変更要求とは

変更要求（change request / change control request）とは

変更要求とは、プロジェクトにおいて文書や成果物、ベースラインへの修正を求める正式な提案のことです。
プロジェクトで設定された目標（スケジュール、コスト、スコープ、品質）が達成できない場合に、正式な変更として処理するために発行されます。
変更管理要求（CCR：change control request）とも呼ばれます。


文書、プロジェクトのベースライン、成果物、またはこれらの組合せに対する修正が必要になる変更を行わせる正式な要求
（PMBOKガイド第5版より抜粋）

変更要求の種類

変更要求はその内容により、是正処置、予防処置、欠陥修正、更新の４つに分類されます。

指定	説明
是正処置	計画と実績のズレを修正するように再調整するための処置。例）あるタスクが、プロジェクトマネジメント計画書に記載したスケジュールから遅れたので、遅れを解消させるために要員を追加する。
予防処置	プロジェクトが計画通り進むように、事前に行う処置。例）あるサブシステムの成果物の品質が、要求されるレベルを満たさないことが予想されるので、設計ドキュメントのレビューに有識者を参加させる。
欠陥修正	プロジェクトの成果物の不具合を修正する作業。例）受入れテストにおいて、あるサブシステムのプログラムが要求仕様を満たしていないことが判明したので、プログラムを修正する。
更新	コントロールされている計画書等に対する変更で、ステークホルダ等からの改善要求や内容の追加や修正を反映する。例）法規制が改定されたので、新しい法規制に対応するための活動をWBSに追加する。

変更管理とは

変更管理（Change Control）

変更管理とは、プロジェクトからの変更要求に対する管理のことです。
プロジェクトからの変更要求は、変更によるリスクを最小限におさえることを目的として、変更の一連の流れを管理する必要があります。
厳格化するためにも、事前に変更の仕組みや手続きを規定した「変更管理手順（変更管理システム）」を定めておき、管理手順に則って処理します。

変更登録簿（Change Register）

変更登録簿とは、変更要求を登録しておく記録簿です。
変更要求を受け付けたら、変更登録簿に登録して、変更内容を審議する流れとなります。

変更管理委員会（CCB:Change Control Board）

変更管理委員会とは、プロジェクトの計画変更が発生した場合に、その変更内容を精査し、承認または棄却を決定する組織です。
変更の意思決定や判断を専門とする変更管理委員会を設置することで、マネージャーの負担を最小限に抑えつつ、業務の属人化も避けられます。

プロジェクト内容の変更要求が作成された場合は、変更管理委員会で意思決定（承認、否認、保留）をします。
変更管理委員会が客観的視点から変更内容を判断し、変更管理を実施することで、スコープクリープの発生を予防できます。

コンフィギュレーション・マネジメント（configuration management、構成管理）

プロジェクト管理における構成管理とは

構成管理とは、変更作業を確実に管理することを目的に規定された管理技法です。
構成要素を特定して、変更実施の結果を記録し、要求事項が満たされているか検証する支援を行います。

PMBOKの統合変更管理プロセスにおいては、以下のように定義されています。


プロジェクトのプロダクト、サービス、所産、構成要素などに対する変更と実施状況を記録・報告したり、要求事項への適合性を検証する活動を支援したりする活動

構成管理では、具体的に下記のような変更に関連する作業を実施します。
・プロダクト・構成要素などの仕様・特性を文書化する。
・変更の実施状況を記録・報告する。
・変更事項の適合性を検証する監査に情報を提供する。

コンフィギュレーション・マネジメント計画書

コンフィギュレーション・マネジメント計画書とは、プロジェクトにおける様々な文書・資料・成果物を変更する場合のバージョン管理方法をまとめた文書のことです。
計画書を厳守することで、不用意な変更を防止でき、結果的にはスコープクリークやスケジュール・コスト超過を防ぐことができます。

備考

変更諮問委員会（CAB：Change Advisory Board）とは

変更諮問委員会とは、ITサービスマネジメント（ITIL）における変更管理を行う委員会です。
ITサービスマネジメント分野における変更管理は、「この変更がすでに動いているサービス、またはサービス運用にどのような影響を与えるか」を考えて審議します。

一方、プロジェクトマネジメント分野における変更管理は、「変更がプロジェクトの進行にどのような影響を及ぼすのか」などを考えて審議します。
CCBとCABは、実施される分野が異なる組織ということです。