アウトソーシング(外部委託)について

アウトソーシング(outsourcing)とは

アウトソーシングとは

アウトソーシングとは、自社内で行っていた業務の一部を外部企業に委託することです。
業務委託、外注、外部発注、外製などの様々な言い方があります。

語源は英語の「outsource」であり、「out=外へ」+「source=調達する」=外部委託するという意味になります。
なお、アウトソーシングは元々は和製英語であったようですが、海外でも通じるケースが多いようです。
ただし、「outsource」という場合、経費削減が目的となります。
自社内では難しい専門的で高度な仕事を実現するために、外部調達する場合は「subcontract」といいます。


アウトソーシングのメリット・デメリット

アウトソーシングのメリットは、人材リソースが効率的に管理できることです。
・コスト面:自社の組織の肥大化を防ぎつつ、状況に応じて人件費を調整できる。
・能力面:自社内に技術力、労働力、専門性といったリソースが不足している場合でも、外部に委託して補うことができる。

デメリットは、発注元の事情によって多岐に渡りますが、例えば以下の点が挙げられます。
・自社内に知識や経験が蓄積されないため、組織の技術力、専門性が形骸化してしまう。
・プロセスの確認や改善施策を行いにくく、品質管理が難しい。その結果として、低品質な成果物が生成される。


契約形態

請負契約

請負契約とは、受注者が仕事の完成を約束し、仕事の完成に対して報酬を支払う契約のことです。
受注者は成果物の「完成責任」を持ち、成果物の完成をもって契約上の債務を履行したことになります。
特約がない限り、成果物が完成しなければ、その報酬(請負代金)を請求することが原則出来ません。

請負契約では、以下のような注意点があります。

  • 請負契約では、発注者が受注者側の作業者に直接指揮命令を行うことはできません。
    発注者は受注者の管理者に対して、会社対会社の関係で作業依頼を行います。

  • 受注者側の作業者が、発注者の事業所で作業を実施する場合は、特に新たな雇用契約を結ぶことなく、作業者と受注者の雇用契約のままとなります。
    また、始業時間・就業時間、休憩時間、休暇取得のルール、服装などの管理は、発注者ではなく受託者側が作業者へ指示します。

  • 受注者側は、納入後の成果物に対して契約不適合責任を負います。
    成果物の不具合に対して、1年間は無償で修正対応を行う必要があります。

  • 請負契約によるシステム開発では、特に契約に定めない限り、受注者側が開発したプログラムの著作権は受注者側に帰属します。


準委任契約

準委任契約とは、委託された作業に対して、受注者側が業務処理するという契約のことです。
「善管注意義務(善良なる管理者の注意義務の略。客観的に要求される程度の注意)」を負って作業を受託する契約です。

報酬には「履行割合型」と「成果完成型」の2種類があります。(2020年4月から施行)
・履行割合型は、作業時間や工数を基準として報酬が支払われる仕組みです。
・成果完成型は、完成した成果に対して報酬が支払われる仕組みです。ただし、必ずしも完成させる義務はありません。

準委任契約では、以下のような注意点があります。

  • 受注者は成果物の完成責任を持たず、契約不適合責任も負いません。
    ただし、業務における成果に対して、最大限の努力義務はあります。

  • 請負契約と同じく、準委任契約は発注者が受注者側の作業者に直接指揮命令を行うことはできません。
    発注者は受注者の管理者に対して、会社対会社の関係で作業依頼を行います。


委任契約

委任契約とは、「法律行為」を伴う業務を委託する際に使用する契約のことです。
法律行為とは、具体的に下記のような行為です。
・訴訟にあたり、弁護士に依頼する。
・確定申告の手続きを税理士に依頼する。
・相続関連の手続きを司法書士などに依頼する。

準委任契約は法律行為以外を業務を委託する際に結ぶ契約です。
つまり、ソフトウェア開発やインフラ整備などの業務委託行為は準委任契約に該当します。


派遣契約

派遣契約とは、労働者派遣法に基づき、発注者が受注者側の作業者に直接指揮命令を行うことができる契約のことです。
発注者が、作業者を雇用する派遣会社(派遣元)と契約を締結し、派遣元から労働者を受け入れる契約です。

派遣元も作業者も成果物の完成責任を持たず、契約不適合責任も負いません。
労働者派遣法に基づく契約上の特徴がいくつかありますので注意が必要です。
詳細は ソフトウェア開発業務に関する労働者派遣法 を参照ください。


報酬形態

定額契約(Fixed Price)

定額契約とは、製品やサービスに対して一定額の固定金額を支払う契約です。
定額契約は、コストが増加しても価格に転嫁できないため、納入者側のリスクが高い契約です。
発注者側からすれば、仕様漏れがあっても支払い金額が変わらないので、金銭的なリスクが無いというメリットがあります。

定額契約には、以下の3つの契約形態があります。

契約形態 説明
完全定額契約
(FFP:Firm Fixed Price)
作業開始前に金額が設定されて、作業スコープが変更されない限り金額は変わらない契約です。
広義には、定額契約はこの契約のことを指します。
定額インセンティブ・フィー契約
(FPIF:Fixed Price Incentive Fee)
定額に加えて、あらかじめ合意した評価の達成度合いに応じて金銭的インセンティブが追加される契約です。
完全定額契約の場合に比べて、高品質化や納期遵守する確度を上げることができます。
経済価格調整付き定額契約
(FP-EPA:Fixed Price with Economic Price Adjustment。)
インフレ率の変化や商品コストの高騰・下落など、市場経済の環境変化を支払い価格に反映させる契約です。
プロジェクトが長期にわたる場合や、支払いに為替が絡む場合に採用されます。

実費償還契約(Cost-Reimbursable Contract)

実費償還契約とは、完了した作業にかかった全ての実コストに、納入者の利益相当分を加えた金額を支払う契約です。
この契約は、契約期間中に成果物や作業のスコープが著しく変更されることが予想される場合に採用されます。
この契約は発注者側に金銭的リスクが高い契約です。

契約形態 説明
コスト・プラス定額フィー契約
(CPFF:Cost Plus Fixed Fee)
作業にかかった実コストに加えて、作業の報酬(一定比率をかけた定額フィー)を支払う契約です。
コスト・プラス・インセンティブ・フィー契約
CPIF:Cost Plus Incentice Fee。
作業にかかった実コストに加えて、報奨金(予めパフォーマンス目標の達成度合いを設定)を支払う契約です。
コスト・プラス・アワード・フィー契約
CPAF:Cost Plus Award Fee
作業にかかった実コストに加えて、「アワード・フィー」を支払う契約です。
アワード・フィーとは、発注者が成果物やパフォーマンスに満足した場合に支払われる報奨金のことです。
発注者の主観的で一方的な判断によって支払いが決められるため、納入者は不服を申し立てられません。

タイム・アンド・マテリアル契約(T&M:Time and Material Contract)

タイム・アンド・マテリアル契約とは、定額契約と実費償還契約の両方の側面をもった契約形態です。
「時間と材料の契約」という名前の通り、固定の材料費(人件費など)と変動する時間(作業時間)の料金を支払います。

タイム・アンド・マテリアル契約は、プロジェクトスコープが不明であり、プロジェクト要件が変更となる可能性が高い場合に採用される契約です。
資材購入、要員増強や専門家招聘といったリソース追加に対応したコストを充填する契約です。


下請代金支払遅延等防止法

下請代金支払遅延等防止法とは

下請代金支払遅延等防止法(下請法)とは、親事業者(発注者)による下請事業者(受注者)に対する優越的地位の乱用行為を取り締まるために制定された法律です。
親事業者が下請法に違反した場合には、公正取引委員会から、違反行為を取り止めるよう勧告されます。


下請代金支払遅延等防止法で禁止されている行為

下請法による禁止行為は、以下のものがあります。

・下請業者に委託する業務内容は決まっているが、ユーザーとの契約代金が未定なので、下請代金の取決めはユーザーとの契約決定後とすること。
親事業者が事前に下請代金を決定しないで発注して、納品後に価格を交渉・決定することは、違反行為となります。
なぜなら、下請事業者は「取引をしない」という選択肢を失っている中で下請代金を交渉することとなり、非常に不利な取引方法となるからです。
下請法では、親事業者に対してあらかじめ協議の上、取り決めた下請代金の額を記載した発注書面を交付することが義務付けられています。(第3条)

・顧客が求める仕様が確定していなかったので、発注の際に、下請事業者に仕様が未記載の書面を交付し、仕様が確定した時点では、内容を書面ではなく口頭で伝えた。
上のケースと同じく、下請法第3条では、親事業者は下請代金の額を記載した発注書面を交付することが義務付けられています。
下請法は、親事業者の下請事業者に対する取引を公正に行わせることで、下請け業者の利益を保護することを目的としています。



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