ソフトウェア開発業務に関する労働者派遣法について

労働者派遣法とは

労働者派遣法とは

労働者派遣法とは、労働者派遣事業を適切に行い、派遣労働者を保護するための法律です。
正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といい、労働者派遣事業法と呼ばれることもあります。
1986年に制定されて以来、雇用形態の多様化などさまざまな変化に伴って、適用対象を広げながら、何度も改正されています。


労働者派遣事業とは

労働者派遣事業とは、派遣元事業主(派遣会社)が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事させる事業のことです。
社内の人材だけでは対応しきれない業務を、専門的な知識や技術を持つ外部人材で補うために整備された仕組みです。

2015年の法改正以降、すべての労働者派遣事業を行うに当たっては、厚生労働大臣の許可を得る必要があります(労働者派遣法5条1項)。
無許可で労働者派遣事業を営んだ場合、違法となります(労働者派遣法59条)。


派遣先事業主の講ずべき措置

派遣先管理台帳とは

派遣先管理台帳とは、派遣先企業が派遣社員の就業日、就業内容、就業条件、担当した業務内容などを記録した書類です。
台帳は、派遣先企業が作成する義務(法第 42 条)があり、派遣社員の労働に関する実態を把握するために作成します。

派遣先管理台帳は、派遣労働者が派遣先企業で適正な雇用環境に置かれているかを調べる「就業状況報告書」の資料としても使われます。
また、台帳は派遣期間終了日から3年間の保管が義務づけられています。


派遣元事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、派遣就業に関し、派遣元管理台帳を作成し、当該台帳に派遣労働者ごとに次に掲げる事項を記載しなければならない。
(労働者派遣法第 37 条)

派遣先責任者の選任

派遣先責任者とは、派遣社員の就業管理を一元的におこない、派遣先における派遣労働者の適正な就業を確保する人物のことです。
派遣先企業は、労働者派遣法第41条に基づき派遣就業に関し所定の事項を行わせるため、派遣先責任者を選任しなければなりません。
なお、選任に当たって専門の資格などは必要なく、関連知識さえがあれば、派遣先企業の社員の中から誰でも任命できます。

派遣先責任者の役割は、派遣社員の管理や派遣先企業とのコミュニケーションなど多岐に渡ります。
労働者派遣契約が遵守できているか確認して、均衡待遇確保や苦情処理などを実施します。


派遣先は、派遣就業に関し次に掲げる事項を行わせるため、厚生労働省令で定めるところにより、派遣先責任者を選任しなければならない。(労働者派遣法第 41 条)

派遣契約内容の周知

派遣先責任者の責任において、派遣契約で定められた就業条件や契約内容について、揮命令する者その他の関係者に対し周知する必要があります。
これは、派遣労働者の実際の業務が派遣契約の内容と異なっていたり、就業場所が契約と異なるような場合に、早急に是正するための仕組みです。


派遣先は、労働者派遣契約の定めに反することのないように適切な措置を講じなければなりません。
(労働者派遣法第 39 条)

派遣元事業主の講ずべき措置

派遣元責任者の選任

派遣元責任者とは、労働者派遣事業者(派遣元事業主)に選任された、派遣労働者の適切な雇用管理や保護などを担う人物のことです。
派遣社員からの苦情への対応や、派遣先との連絡調整、派遣元管理台帳の作成などの労務管理を担当します。
派遣元責任者は自社の役員や従業員から、派遣元責任者講習の受講歴や管理経験など、いくつかの要件を満たした人物が選任されます。


派遣労働者の教育訓練の機会の確保

派遣元事業主の講ずべき措置として、派遣労働者の教育訓練の機会の確保など、福祉の増進が挙げられます。
派遣労働者のキャリアに関する助言、指導、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置は派遣元の企業が行います。


派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者について、
各人の希望、能力及び経験に応じた就業の機会(派遣労働者以外の労働者としての就業の機会を含む。)及び教育訓練の機会の確保、
労働条件の向上その他雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることにより、これらの者の福祉の増進を図るように努めなければならない。
(労働者派遣法第 30 条 7)

派遣先企業から見た派遣労働者への注意点

就業時間や休日について

派遣労働者の就業時間は、派遣元企業の定めに従います。
派遣先企業が、自社社員と同様の残業を行うよう指示することは不適切です。

派遣労働者の休日は、派遣元企業の定めに従います。
派遣先企業が休日を決めることは適切ではなく、派遣社員が派遣先に対して有給休暇の申請をする必要もありません。
また、繁忙期だからといって、派遣先企業が派遣社員の休暇申請に対して休暇の変更を指示することも適切ではありません。


派遣労働者からの苦情について

派遣労働者からの作業環境に関する苦情に対して、派遣先企業は可能な限り対応する必要があります。
雇用関係が無いからといって、作業設備を用意しないことは適切な行為ではありません。


派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、
当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもつて、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない。
(労働者派遣法第 40 条)

別作業を依頼してはいけない。

派遣労働者に対して、派遣期間中に作業時間が空いたからといって、派遣取決め以外の作業を依頼することは適切ではありません。
労働者派遣契約には「従事する業務の種類」を定めることになっており、この定めに反しないようにしなければなりません。


派遣労働者の責任関係

作業ミスによって欠陥製品ができた場合、派遣労働者や派遣元企業に対して製造物責任を追及することはできません。
派遣労働者は、派遣先企業の指揮命令のもとで業務従事することになるので、作業ミスによる損失の責任は派遣先企業にあります。


派遣労働者を選択することはできない

派遣先による事前に労働者を特定する行為(履歴書の提示や事前面接なども含む)は禁止されています。
例えば、「前回委託した際にプロジェクトの成功に大きく貢献したX社のY氏の参加を契約の条件」とすることはできません。
その他、「派遣される要員のスキルを適切に判断しようと考え、事前にX社の派遣候補者を面接する」ことはできません。


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