ももの知恵の樹

イライラへの対処法

イライラ(苛苛)とは

イライラとは

イライラとは、自分の思い通りにならず気が焦ったり、不快なことがあり神経が高ぶる様子のことを意味します。
類義語としては、癇癖(かんぺき)、癇癪(かんしゃく)、易怒性(いどせい)、易刺激性(いしげきせい)などがあります。
日常的に使う類義語としては、ムカつく、腹が立つ、鬱陶しい、機嫌が悪い、などがあります。
英語でもannoy、irritate、frustrate、upsetなど、イライラの程度や様子によって複数の語彙があります。


「イライラ」と「怒り」の違いについて

「怒り」とは、不満や不快の気持ちを抑えられずに、不快な対象を責める態度や様子のことを意味します。
つまり、イライラしたところから我慢できず、その気持ちを外に出したものが「怒り」です。
プルチックの感情の輪において、怒りは「二次感情(ある感情が発生した後に発生する感情)」に分類されています。

「イライラ」は内向的な行為であり、「怒り」は外向的な行為です。
「イライラ」は、他者から気付かれないことがあるように、問題解決のためには何も生みださない行為です。
これに対して、「怒り」は外界への影響を与えることのある行為であり、問題に対して少なからず影響を与えます。
ただし、「怒り」は、場合によっては取返しの付かない結果を生み出すため、実行する場合には細心の注意や覚悟が必要です。


なぜイライラするのか?

「イライラ」と「焦燥感」の関係について

焦燥感とは、焦りや不安を感じて、気持ちの整理がつかない不安定な精神状態になることを意味します。
これは特に、目標に対する達成欲求が強い場合や、時間的な制約がある状況下において、特に感じられる感情です。

イライラは、焦燥感という土台の上に発生します。
これには、自身がコントロールできない課題(他者の課題)をあたかも自身の課題であると考えてしまうことが大きく影響します。
目的が達成できないことに、自分の力不足を感じたり、他人からの評価が気になるなど、焦燥の気持ちがイライラを誘発します。
逆に、順調に進む物事に対しては、焦燥感を抱かないため、それゆえにイライラも大抵は発生しません。


「イライラ」と「価値観の相違」について

他人の行動や態度などに対するイライラは、価値観の違いによって生まれます。
価値観とは、物事を評価する際に基準とする、何にどういう価値を認めるかという判断のことです。

自身の価値観と他人の価値観が大きく乖離している時に、それを許容できない場合には、人間は防衛本能が刺激されます。
防衛本能が刺激されると生存本能に火が付き、攻撃的な性格となり、身体を強制的な活動状態に移行します。
つまり、イライラして他人に怒ることは、自身の価値観や存在意義といった生存能力を否定させないための本能的な行為です。

なお、現代は価値観が多様化しているため、昔よりもイライラしやすい環境になっています。
昔は、多くの人にとって暗黙的な共通の価値観(終身雇用、高い結婚率/出産率、趣味嗜好の類似など)がありました。
しかし現代では、多様な価値観が許容され、価値観が異なる人たちと付き合う機会が多くなっています。
このように自身と異なる価値観や考え方のずれは大きなストレスとなり、イライラの原因となります。


心身の不調

イライラの発生には、心身の健康状態が大きく作用します。
例えば、睡眠不足や疲労感がある場合には、どのような人でもイライラしがちになります。
その他にも、身体疾患、精神疾患(統合失調症、高次脳機能障害など)など、自身では解消できないイライラの原因も存在します。
イライラの原因が見つからずに、どうしても解消できない場合には、医師の診察を受けることが重要です。


イライラするメカニズム

イライラはストレスホルモンの分泌によって引き起こされる

人間は、ストレスや強い不安感を感じると交感神経が優位になり、心拍数の増加や血圧の上昇といった反応が起こります。
この反応は人間の生存本能であり、緊張や怒りの発生と同じく、コルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されることで引き起こされます。
この時、交感神経優位の状態が続くと、ストレスホルモンを制御しきれなくなり、心身の興奮状態が制御できなくなります。
これにより、思考力や感情の抑制力が低下し、不快感が増大していくことが「イライラ」の発生メカニズムです。


名前 説明
コルチゾール 副腎皮質から分泌されるホルモンで、ストレスがかかると急激に分泌が増えます。
身体を動かす生命維持に欠かせないホルモンで、血糖値を上げる働きがあります。
ノルアドレナリン 副腎髄質から分泌されるホルモンで、怒りの感情を高めてしまうホルモンです。
激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに分泌されます。
アドレナリン 副腎髄質から分泌されるホルモンで、交感神経系の活動を高める働きがあります。
交感神経系が活性化すると分泌され、血圧を上昇させたり心拍数を増加させたり、集中力を上げる効果があります。

セロトニンが不足するとイライラが発生しやすくなる

セロトニンとは、精神を安定させる神経伝達物質であり、「幸せホルモン」とも呼ばれています。
このホルモンは、ストレスホルモンをコントロールし、精神を落ち着かせる役割を担います。
セロトニンが不足すると、脳を興奮させる神経伝達物質のドーパミンやノルアドレナリンの分泌を制御できなくなります。
これにより、自制心を保ちにくくなり、思考力や感情の抑制力が低下し、不快感な「イライラ」が発生します。


短期的なイライラへの対処方法

視覚情報以外の五感による刺激を受ける。

イライラを即時に解消するには、外部からの刺激を受けることが有効です。
例えば、下記のような行為が有効です。
・お風呂にゆっくりと入ってリラックスする。
・運動する。
・好きなものをよく噛んで食べる。
・ヘッドフォンをして大音量で好きな音楽を聴く。

ただし、視覚情報への刺激となる行為は控えたほうがよいです。
なぜなら、視覚情報は、脳への負担を発生させ、興奮状態(リラックスとは逆の状態)に向かわせるからです。
映画を見ることや本を読むことはストレスの軽減にはなりますが、直近のイライラを解消するためには効果的ではありません。


日光を浴びる

日光を浴びると、イライラを発生させるストレスホルモンを抑制させることができるセロトニンが分泌されます。
屋外に出て直接日光を浴び、できるれば軽い運動(ウォーキング、ストレッチなど)取り入れると効果的です。
ただし、セロトニンの分泌量には限界があるため、日光浴の時間は30分ほどが良いといわれています。


長期的なイライラへの対処方法

運動、食事、睡眠を十分にとる。

適度な運動、栄養のある食事、十分な睡眠はストレスを軽減します。
ストレスが少なくなるとイライラしなくなります。
逆にいえば、運動、食事、睡眠をとれない状況にいるのにイライラを解消できるはずはありません。
まずはそのような状況にあるか確認して、環境要因の解消を試みることこそが大切です。


物事の見方、考え方を変える

「交流分析」を提唱したことで有名なカナダの精神科医であるエリック・バーン氏は、下記の名言を残しました。


過去と他人は変えられない。 あなたが変えられるのは自分自身と未来だ。

多くの場合、イライラの原因とは、自分自身で変えられない物事となります。
だからこそ、自分の課題と他人の課題を分けて考えられないと、さらにイライラが募っていきます。
物事の見方を変えて、考え方を変えることこそ、イライラせずに生きるために必要な取り組みなのです。
名著と呼ばれる自己啓発書をいくつか読んでみて、感銘を受けた著者をさらに学んでいくことが有効です。


仏教を学ぶ

仏教は、安らかな心をもって生きる「涅槃寂静」ことを目指す宗教です。
その教えは、疑念、イライラ、誤ったものの見方などの「煩悩」を消し去り、心を穏やかにするための方法や考え方を身に着けることができます。
2000年以上に渡って広く信仰されている宗教の言葉は、物事の本質を突いていることが多く、個人の考え方を変える力があります。
仏教は、現代的な自己啓発書よりも普遍性のある考え方を知る最良の教科書と言えるかもしれません。


気分を切り替える言葉を口癖にする

「まあいっか」「次いこう」「それはそれ」という気分の切り替えができる言葉を、日常で意図的に多く使うように心がけます。
そうすることで、嫌な考えや鬱々した思いをため込まず、吐き出して気持ちを切り替えていくことができるようになります。
いっそのこと、「上ばかり見てもキリがない。下には下がいる。下を見ていこうぜ」という考えを持つと気分が楽になります。
とはいえ、反省や向上心までを失ってしまうのはいけないため、自分が大事にしたいところとは分けて考える必要があります。


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