教訓登録簿について
教訓登録簿とは
教訓登録簿(Lessons learned register)とは
教訓登録簿とは、プロジェクト経験から学んだ教訓を体系的に登録しておくプロジェクト文書のことです。
登録簿は、類似プロジェクトが円滑な遂行を果たすための参考資料として役立ち、時間とリソースを節約することに寄与します。
PMBOKでは、教訓登録簿には「失敗事例や改善方法だけでなく、成功事例や成功する方法なども記載すべき」と定義しています。
また、必ずしもテキスト形式である必要はありません。収集した教訓の効率性を高めると思われる場合は、ビデオ、画像、音声、またはその他の形式で記録できます。
学んだ教訓(Lessons learned)とは
学んだ教訓とは、プロジェクトにおける経験から得た全ての知識または理解のことです。
PMBOKでは、「教訓とはプロジェクトの実行プロセスから得られる学習である」と定義されています。
教訓には、失敗や不具合を起こした時の対処方法だけではなく、成功や工夫した内容も含まれます。
教訓リポジトリ(LLR: Lessons Learned Repositories)とは
教訓リポジトリとは、教訓登録簿を管理するデータ管理システムのことです。
リポジトリを構築することで、組織は知識を共有し、教訓が組織のプロセス改善に利用されるようになります。
リポジトリ(repository)とは英語で「貯蔵庫」、「倉庫」などを意味します。
リポジトリは、教訓を保存、参照するための集中的な場所を提供します。
一般的にはデータベースを利用することが多いため、「教訓データベース」などと呼ばれることもあります。
なお、教訓リポジトリは組織に属するものであり、組織のプロセス資産の一部です。
組織知の蓄積
組織知(organization knowledge)とは
組織知とは、組織全体で共有された知識・経験・ノウハウのことを意味します。
対義語は「個人知」といい、組織に共有していない個人に帰属する知識や経験などのことを指します。
組織知は、組織によって創造される知識であるため、「集合知」と呼ぶこともあります。
組織知を充実させることで、組織としてのスキルやノウハウを向上させて、全体としての生産性や価値を高めていくことができます。
また、組織知を蓄積することは、担当者が不在/退職になった場合に業務が停滞する事態を防ぐなどの可用性のメリットがあります。
暗黙知(Tacit knowledge)
暗黙知とは、経験や勘に基づく知識のことで、言葉などで表現が難しい知識のことを指します。
言語化されておらず、言語化されにくいために、共有が難しい知識となります。
例えば、職人の勘やコツというものは暗黙知であり、これらは弟子に伝えるために多くの歳月を必要とします。
形式知(explicit knowledge)
形式知とは、文章・図表・数式などによって説明・表現できる知識のことを指します。
共有が容易であり、誰にも認識が可能であり、客観的にとらえることができる知識です。
暗黙知に対する概念であり、明示知と呼ばれることもあります。
SECI(セキ)モデル
SECIモデルとは、個人が蓄積した知識や経験(暗黙知)を組織全体で共有(形式知)して、新たな新たな知識を生み出すフレームワークです。
一橋大学大学院教授の野中郁次郎氏らが提唱し、広義のナレッジマネジメントにおける基礎理論として用いられています。
SECIモデルは、共同化(Socialization)・表出化(Externalization)・結合化(Combination)・内面化(Internalization)の4つのプロセスを繰り返し行い、新たな知識や技術を生み出します。
なおSECIモデルとは、この4つのプロセスの頭文字を組み合わせた言葉です。