コンティンジェンシー理論について

コンティンジェンシー理論(Contingency theory)とは

コンティンジェンシー理論とは

コンティンジェンシー理論とは、外部環境の変化に応じて、組織の管理方針を適切に変化させるべきというリーダーシップ及び組織の条件適応理論です。

安定した環境下では機械的かつ官僚的組織が有効であるが、不安定な環境下では有機的組織が有効であり、組織の環境と構造との適合関係によって組織成果が向上するという前提に基づく分析です。

なお、コンティンジェンシーとは「偶発、偶然」という意味です。


リーダーシップ理論について

コンティンジェンシー理論におけるリーダーシップとは、唯一最適なリーダーシップ・スタイルというものは存在せず、状況に応じて望ましいリーダーシップのスタイルは異なるとする考え方をします。

主にリーダーシップ・スタイルは、「タスク中心・指示的なスタイル」と、「人間関係中心・非指示的なスタイル」に分けられます。

状況がリーダーにとって非常に好意的であるか、または非常に非好意的である場合には、タスク志向的リーダーシップが有効となります。

状況がリーダーにとって好意的でも非好意的でもない場合には、人間関係志向的リーダーシップが有効となります。


組織について

コンティンジェンシー理論では、あらゆる環境に対して唯一最善の組織は存在せず、環境が異なれば有効な組織は異なるという立場をとります。

例えば、企業の組織構造において様々な業種企業にあてはまる最適な組織はなく、その企業のおかれた環境的要因(状況、業務など)によって適切な組織構造が規定されることとなります。

また、市場安定期の安定した環境においてはライン型の組織をとり、新技術による市場急成長期や経済混乱による市場衰退期などの不安定な環境に対応しなければならないときはスタッフ型組織をとるなど、組織戦略は外部環境によって適切に変化するべきであると考えます。


従来型リーダーシップ理論について

リーダーシップ資質論

リーダーシップ資質論とは、古来から1940年代頃まで主流とされていたリーダーシップ論であり、「優れた資質を持ち合わせた偉人こそがリーダーと成り得る」もしくは「リーダーは作られるものではなく、生まれながら持つ特質である」という理論です。

リーダーシップ論の古典的な理論の一つであり、プラトンの「国家論」においては「英知を持ったリーダーが国を治めよ」という哲人理論を唱えており、マキャベリの「君主論」では「権謀術数に長けたリーダー像が望ましい」と唱えています。


リーダーシップ行動論

リーダーシップ行動論とは、1940年代頃から提唱された「リーダーとは行動によって作られるものである」という理論です。

機能論もしくは職能論とも言われ、訓練によって組織に有効な行動を行える者がリーダーとなる考え方です。

課題の達成を目指す集団が成り立つ為には、実際に課題が達成されていく機能(Task)と集団維持のための人間関係を配慮する機能(Relation)が必要であるという考え方が基礎となっています。


リーダーシップ条件適応理論(コンティンジェンシー理論)

リーダーシップ条件適応理論とは、1960年代頃から提唱された「全ての状況に適応されうる唯一最善の普遍的なリーダーシップ・スタイルは存在しない」という理論です。

ある状況では適切といえるリーダーシップ・スタイルが、他の状況においては不適切なリーダーシップ・スタイルとなる考え方です。


カリスマ的リーダーシップ理論

カリスマ的リーダーシップ理論とは、1970年代に提唱された「部下にカリスマと認知されることで、リーダーはカリスマとなりうる」という理論です。

資質論とは異なり、部下からの認知という視点から「具体的にどのような行動を取れば、カリスマと認知されるのか」を考慮して、カリスマ的な振る舞いをすることで、自己信頼と部下からの信頼を獲得でき、リーダーは部下を目標に導くことが可能であるという考え方です。

経済停滞により競争環境が激変したため、既成ルーティン通りに部下をマネジメントするのではなく、将来のビジョンを描いて部下を牽引するマネジメントが求められる背景から、この考え方が提唱されました。


変革的リーダーシップ理論

変革的リーダーシップ理論とは、1980年代に提唱された「組織の変革を実現するためのビジョンを持つ者がリーダーである」という理論です。

カリスマ的リーダーシップ理論と重なる部分も多いのですが、カリスマ性よりもリーダーの掲げる「ビジョン」が最も重要であると位置づけています。

組織の発展に必要とされる「変革」を永続的に実現するためには、ビジョンを共有して、部下の能力を引き出し、組織学習を促進することで変革を実現するという考え方が基本になっています。


フィドラーのコンティンジェンシー・モデル(Fiedler’s Contingency Model)

フィドラーのコンティンジェンシー・モデルとは

1964年にフィドラー(F.Fiedler) が提唱したコンティンジェンシー・モデル(リーダーシップ条件適応理論)とは、「リーダーシップ・スタイルは集団が置かれている課題状況によって異なる」というリーダーシップ理論です。

リーダーシップとは資質ではなく、「状況に応じて役割を変える必要がある」という考えに基づいています。


状況好意性

リーダーシップの有効性に関わる条件変数を「状況好意性」という概念で定義しています。

条件変数として以下の3要素を定義し、3つの変数が高い場合にはリーダーによってリーダーシップを発揮しやすい状況となり、低い場合にはリーダーシップを発揮するには不利な状況になると提唱しています。

  • リーダーが組織の他のメンバーに受け入れられる度合い
    • リーダーが集団メンバーに支持され受容されているほど好意的
  • 仕事・課題の明確さ
    • タスクの目標、手順、成果が明確で、構造化されているほど好意的
  • リーダーが部下をコントロールする権限の強さ
    • メンバーの採用・評価・昇進・昇給に影響力があるほど好意的

リーダーシップ・スタイル

リーダーシップ・スタイルは、「タスク中心・指示的なスタイル」と、「人間関係中心・非指示的なスタイル」に分けられます。

状況がリーダーにとって非常に好意的であるか、または非常に非好意的である場合には、タスク志向的リーダーシップが有効となります。

状況がリーダーにとって好意的でも非好意的でもない場合には、人間関係志向的リーダーシップが有効となります。


LPC(Least Preferred Coworker)

フィドラーは、リーダーの最も苦手な同僚をLPC(Least Preferred Coworker)という指数で計測しています。

苦手な同僚を好意的に評価するリーダーを「高LPC」、苦手な同僚を避けようとするリーダーを「低LPC」と定義しています。



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