大衆心理について

大衆心理の概要

大衆心理とは

大衆心理とは、社会を構成する集団が合理的是非を判断せずに特定の時流に流される事を指します。

大衆心理が発生する原因は、自身が所属する社会において敵対する勢力が出現した時に団結するという生物としての本能だと言われています。

個が確立されていない社会や精神的に未成熟な子どもは、大衆心理に影響される傾向が強くなるという研究結果があるようです。

なお、社会心理学の用語では、大衆心理のことを「集団心理」と呼ぶことがあります。


斉一性の原理

斉一性(せいいつせい)の原理とは、ある集団が集団の内部における異論や反論などの存在を許容せずに特定の方向に進んでいく事です。

特に、全会一致で意思決定を行うといった少数派が意見を表明しにくい心理状態となるような状況において発生します。

しかし、多数決のような多数意見が提示された上で意思決定を行う状況では、反対意見の容認が許されているため、斉一性の原理は発生しません。


大衆心理と集団思考

全会一致の幻想:Illusion of Unanimity

全会一致の幻想(ぜんかいいっちのげんそう)は、自己検閲(集団の結束を乱したくないという心理作用から、疑問や反論を自ら控える心理的傾向)と誤認識(各個人としては異論や意見があるにも拘らず、異論が表明されないため、賛成していると認識すること)によって、全会一致の状況が作られていくことです。

人間は多様な意見を持ったり、誤った判断をするため、自然な状態では「満場一致は極めて発生しづらい」ということを認識するべきです。

統計学においては、全ての意見が一致すると逆にそのデータの信頼性が下がるということ(満場一致のパラドックス)が知られています。

もしも全会一致となった場合には、誰かが議論の過程で意見の表明を控えた可能性があると考え、採決を無効にし、議論を振り出しに戻すことが有効な解決方法となります。


沈黙の螺旋

沈黙の螺旋とは、多数派からの同調圧力によって少数派が沈黙を余儀なくされていく過程を示したものです。

人間は自分の意見が世の中で多数派か少数派かを判断する直接的統計能力を持っており、少数派だと思った場合には孤立を恐れて沈黙を保ちたがる性質があります。

多数派の意見は声高に話され、少数派の意見は沈黙し続けるという循環が起き、さらに多数派の意見が大きく顕在化しつつ少数派の意見は小さくなり、螺旋が収束するように「世論」が形成されていきます。

この現象は、1966年にドイツの政治学者エリザベート・ノエレ=ノイマン の論文で言及されました。


自薦の用心棒

自薦(じせん)の用心棒とは、集団心理や社会的影響の結果として得られた規範を、擁護しようとする存在を指します。

自薦の用心棒は、しばしば、発言者に対する誹謗中傷やネガティブキャンペーンなどを行い、異論や反対を封殺しようと試みます。

「あなたも多勢の意見に従いなさい」という同調圧力を発して、同調現象を発生させることがあります。


悪魔の代弁者:devil's advocate

悪魔の代弁者とは、ディベートなどで多数派に対して、"敢えて"自分の意思と反する批判や反論をする人のことです。

(語源は、中世のカトリック教会で、列聖(人物に対する聖人認定)を審議する際に、候補者への反対意見を陳述する官職名です。)

批判や反論を主張することで、意見の少数派が発言しやすくなり、議論自体を活発化させ、その主張の妥当性をより明らかにすることができます。

ただし、無駄に議論を長引かせたり、解決するべき問題点を曖昧にしてしまう危険性があるので注意が必要です。


アビリーンのパラドックス:Abilene paradox

アビリーンのパラドックスとは、個人の考えや嗜好に反していても、集団の決定に従ってしまう状況をあらわすパラドックスです。

この言葉は、ある家族が、本当は誰も行きたくないのに、他の家族が行きたがっていると思い込んでおり、テキサス州アビリーンへの暑い長旅に出るという逸話に由来している。

あるグループにおいて、グループ内のほとんど又は全メンバーが望んでいないにも関わらず、そのような行動を集合的に決定する事は、様々な場面で発生してしまいます。

このパラドックスは、リーダーやマネジャーが集団思考の危険性を認識し、反対意見を尊重し、奨励する環境づくりに取り組むための訓話としてよく引用されます



多数の人々が共有する性質

Tumblerより引用


知っておくべき大衆心理
支配者やマスメディア、広告代理店などは以下のような「大多数の人々が共有する性質」を利用て、間接的に世論を操作している

1.有名人につられる
2.できないことをしたいと思う、夢がある
3.多数派にいたいと思う
4.真実を求める
5.権威が好き
6.自分が他人からどう見られるかを気にする
7.心配性 (不安症)
8.ステータスに憧れる
9.リスクがないと思うと飛びつく
10.数ヶ月経てば大概の事件は忘れる
 
(例)
・ある商品を買わせたい(思い通りに行動させたい)
  →買わせたい人々の好きな有名人に商品を紹介させる(1)
  →「あなたの願望、叶えます」と成功願望に付け入る(2)
  →「今大人気!」「全米が泣いた」などと同調を誘い宣伝する(3)
  →「真実を知らないままでいいんですか?」と問いかける(4)
  →「日本○○協会」などと格調高い名義で宣伝する(5)
  →「買わない人はこう思われますよ」と不安を煽る(6)
  →「早い内から勉強させないと将来大変なことになる」と子を思う気持ちに付け入る (7)
    →「これさえ持てばあなたもセレブの仲間入り」などとステータスの欲を刺激する(8)
  →「無料です」と宣伝する(9)
  →とある有名人が事件後、ほとぼりが冷めるまで静かに待ち、いつの間にかお茶の間に復帰している(10)
※勿論、全てが悪意のあるものとは限らない

関連ページ