四法印について

法印について

法とは

仏教における法とは、「真理、教え、規範」を意味する言葉です。
例えば、仏法とは、仏の説かれた真理のことを意味します。
この単語は、「ダルマ」というサンスクリット語を漢語に訳したものとなります。


ダルマ(Dharma)とは

ダルマとは、インドの宗教・思想上の概念であり、「維持するもの、保たれるもの」などを意味する言葉です。
この言葉は、非常に多様な意味を持っており、例えば、法律はダルマであり、宗教的義務もダルマとなります。

単語自体は、インド社会において、特別な仏教用語というわけではなく、ごく普通に使われている日常語となります。
しかしながら、外国人には文脈上の意味において非常に理解しにくい単語であると言われています。


法印(ほういん)とは

法印とは、仏の説かれた真理の印であり、仏教が真理であることを示す標識のことです。
印は「旗印」のことであり、仏教であることを証す基準を意味します。
つまり、仏教と他の宗教(バラモン教や六師外道の教えなど)を明確に分ける旗印が法印です。


四法印とは

四法印(しほういん)とは

四法印とは、仏教の教理の基本を要約したもので、仏教の重要な真理を示しています。
これらは、あらゆる現象や物事に共通する特性を示すものであり、涅槃に至るには知らなければならない真理となります。

説明
諸行無常(しょぎょうむじょう) 「諸(もろもろ)の行(物事)は常(つね)では無い」という解釈になります。
つまり、あらゆる物事は常に変化して移り変わっている、ということを意味します。
諸法無我(しょほうむが) 「諸(もろもろ)の法(現象)には我(孤立)は無い」という解釈になります。
つまり、一切の存在はそれ自体単独では存在できない、ということを意味します。
涅槃寂静(ねはんじゃくじょう) 「涅槃(悟りの世界)は、寂静(静やかな安らぎの境地)であるという解釈になります。
つまり、煩悩の炎の吹き消すことで心身ともに安らぎの状態に至ることができる、ということを意味します。
一切皆苦(いっさいかいく) 「一切(この世のすべて)は、皆苦(思い通りにならず、苦に満ちている)であるという解釈になります。
一切行苦(いっさいぎょうく)、一切諸行皆悉是苦(いっさいしょぎょうかいしつぜく)などとも言われます。

涅槃(ねはん)とは

涅槃とは、煩悩を吹き消して智慧が完成した、悟りの境地のことです。
これは、仏教で理想とする、一切の悩みや束縛から脱した安楽の境地となります。
涅槃とは、サンスクリット語で「ニルヴァーナ」といい、「吹き消す」ことを意味します。


無我(むが)とは

無我とは、自己を固定的な実体として捉えない考えのことです。
これは、あらゆる現象や存在は独立して存在せず、あらゆる関係性によって成り立っているという真理を指します。
自我という固定された実体は存在せず、全ては変化し続ける、無常なものであることを理解することで悟りに向かうことができます。


三法印とは

三法印(さんぼういん / さんぽういん)とは

三法印とは、四法印から法印を一つ除外したもので、仏教における「三つの真理」を指す言葉です。
この三つの法印は、仏教教理の特徴をあらわすものであり、三法印の特徴を持つものが仏教であると定められます。

多くの場合、三法印は「諸行無常、諸法無我、涅槃寂静」を指します。
つまり、四法印から「一切皆苦」を除いた法印となります。


三法印と四法印の違いについて

仏教の経典においては、あらゆる所に三法印が記されています。
ただし、それぞれの法印が示す内容が経典によって異なり、さらには四法印が並べられている経典もあります。


ダンマパダ(パーリ仏典):諸行無常、一切皆苦、諸法非我
雑阿含経        :一切行無常、一切法無我、涅槃寂滅
涅槃経         :一切行無常、諸法無我、涅槃寂滅
蓮華面経        :一切行無常、一切法無我、及寂滅涅槃

法印の中で、世界の現象を説明しているのは、諸行無常、諸法無我、一切皆苦です。
これに対して、涅槃寂静は修行によって目指す地点を説明しています。
さらに、涅槃寂静と一切行苦はほとんど正反対の意味となっており、状態としても真理を知る前後になります。
それゆえに、教えを一貫するために、四法印ではなく三法印を提示することが多いのかもしれません。

なお、実際のところ、三法印や四法印がいつから仏教の代表的な教えとなったかは定かではありません。
釈尊入滅後の経典作成時に定説になったという学説もあるようです。


三相(さんそう)とは

三相とは、全ての存在および物事は「無常・苦・無我」の3つであるという思想です。
人間は、三相について誤解や妄想を抱いており、その誤解や妄想によって人は苦しむことになります。

  1. 無常(anicca):常に変化し続けること。諸行無常。
  2. 苦(dukkha):苦しみ、不満であること。一切皆苦、一切行苦。
  3. 無我(anatta):独立的に自存しているものはない。諸法無我、諸法非我。

三相と三法印は、ほぼ類似した概念を提唱しています。
一説には、そもそも三法印は三相を元にした概念であるといわれることもあるようです。


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