音楽理論_チャーチモード
チャーチモード(教会旋法)
モード(旋法)とは
モードとは、民族音楽のメロディーの基盤として使われていた仕組みです。
現在の音楽のように「キー(調)の上でメロディーが演奏され、コードで伴奏する」という「調性音楽」が確立される以前から存在していた遺物です。
スケールと似た意味で用いられることがありますが、スケールよりも古くからある音階の概念です。
チャーチモードとは
チャーチモードとは、中世の教会音楽の基盤となっていた7種類の音階(スケール)です。
グレゴリオ聖歌で用いられていたことで有名でしたが、調性音楽の確立によって過去の遺物となっていました。
しかし、20世紀からジャズの分野で「モードジャズ(モード音の即興的な使い方)」や「コード・スケール(アベイラブル・ノート・スケール)」として再度注目されるようになりました。
チャーチモードの構成
チャーチモードは、単純にいえばメジャースケールの各音をトニックに変えたスケールです。
ピアノの白鍵を「ドレミファソラシ」、「レミファソラシド」...と各ルート音を叩いていった時のピッチ(音程)をそのままスケールにしたものとなります。
チャーチモードには12音x7種類=84のモード・スケールが存在することになります。
アイオニアンスケール(ionian scale)
ピアノの白鍵だけを「ド」から開始して叩く「ドレミファソラシ」の音階です。
メジャースケールと全く同じ構成です。
P1 M2 M3 P4 P5 M6 M7 P8
ドリアンスケール(dorian scale)
ピアノの白鍵だけを「レ」から開始して叩く「レミファソラシド」の音階です。
P1 M2 m3 P4 P5 M6 m7 P8
3度の音が短音でありマイナー系の響きを持っていますが、マイナーの暗さが中和されて洗練されたような感覚を生み出すスケールです。
フリジアンスケール(phrygian scale)
ピアノの白鍵だけを「ミ」から開始して叩く「ミファソラシドレ」の音階です。
P1 m2 m3 P4 P5 m6 m7 P8
不安定でミステリアスな感覚を生み出すマイナー系スケールです。
リディアンスケール(lydian scale)
ピアノの白鍵だけを「ファ」から開始して叩く「ファソラシドレミ」の音階です。
メジャー・スケールから4度の音を半音上げる構成となります。
P1 M2 M3 +4 P5 M6 M7 P8
フワフワと漂うような浮遊感を生み出すスケールです。
ミクソリディアンスケール(mixolydian scale)
ピアノの白鍵だけを「ソ」から開始して叩く「ソラシドレミファ」の音階です。
メジャー・スケールから7度の音を半音下げます。
P1 M2 M3 P4 P5 M6 m7 P8
メジャー系の明るさとブルージーの雰囲気をもつ独特な響きを生み出すスケールです。
エオリアンスケール(aeolian scale)
ピアノの白鍵だけを「ラ」から開始して叩く「ラシドレミファソ」の音階です。
アイオニアンスケールと平行調の関係にある、ナチュラルマイナースケールと全く同じ構成です。
P1 M2 m3 P4 P5 m6 m7 P8
ロクリアンスケール(locrian scale)
ピアノの白鍵だけを「シ」から開始して叩く「シドレミファソラ」の音階です。
P1 m2 m3 P4 m5 m6 m7 P8
ロクリアンスケールは主に「△m7(♭5):マイナー・セブンス・フラットフィフス・コード」に対して使われるスケールです。
メジャー系とマイナー系
アイオニア、リディア、ミクソリディアは第3音までのピッチが長三度であり、メジャー系の明るい響きを持ちます。
対して、ドリア、フリジア、エオリア、ロクリアは短三度になるので、マイナー系の暗い響きがあります。
覚える際には、アイオニアン(メジャースケール)及びエオリアン(ナチュラルマイナースケール)を基準にすると認識しやすいといえます。
アイオニアン・スケール : P1 M2 M3 P4 P5 M6 M7 P8
リディアン・スケール : P1 M2 M3 +4 P5 M6 M7 P8
ミクソリディアン・スケール : P1 M2 M3 P4 P5 M6 m7 P8
エオリアン・スケール : P1 M2 m3 P4 P5 m6 m7 P8
ドリアン・スケール : P1 M2 m3 P4 P5 M6 m7 P8
フリジアン・スケール : P1 m2 m3 P4 P5 m6 m7 P8
ロクリアン・スケール : P1 m2 m3 P4 m5 m6 m7 P8
チャーチモードの使い方
チャーチモードは、ジャズやロックなどの現代的な音楽においては「コードスケール」として用いられます。
コードスケールとはコード上で使えるスケールという意味になります。
例えば、「C -> Am -> Dm7 -> G7」というダイアトニックのコード進行においては、Cメジャースケールの音を用いることができます。
しかし、Cメジャースケールだけでは音楽的に単調になってしまうので、それぞれのコードで使えるスケールを設定するという考え方です。
基本的にはコードの構成音を多く含むスケールが使うことが多いといえますが、ひとつのコードに対して用いることができるスケールは複数あります。
なお、上記コード進行において「Cアイオニアン -> Aエオリアン -> Dドリアン -> Gミクソリディアン」を用いると、それらは全てCメジャースケールの構成音であるため、何の効果もなく面白みがありません。
例えば、AmコードでAエオリアンではなく「Aドリアン」、G7コードでGミクソリディアンではなく「Gリディアン」を用いるとスリルが生まれて音楽に面白さがでます。
あまりにキーと構成音が違うスケールを選択すると、不協和音の不快さが大きくなるので、スケールの選択は研究する必要があります。