CCPM(Critical Chain Project Management)について

CCPM(クリティカル・チェーン・プロジェクト管理法)とは

クリティカルチェーン法とは

クリティカルチェーン法とは、制約条件の理論(TOC:Theory Of Constraints)の考え方をベースにして、「制約」概念を用いるプロジェクト管理手法です。
この手法は、クリティカルチェーンに着目してプロジェクト管理することで、適切なバッファ管理と全体最適化を果たし、プロジェクトのスループットを向上させます。

クリティカルチェーン法は、1997年に、イスラエルの物理学者であるエリヤフ・ゴールドラット氏が著書「Critical Chain」で提唱されました。
TOCの概念を用いたプロジェクト管理手法として、スループット最大化のための具体的な方法論を示しています。


クリティカルチェーンとは

クリティカルチェーンとは、プロジェクト計画において、もっとも時間がかかると想定される作業の連鎖のことです。
クリティカルパス法とは異なり、工程間の繋がりにおいて「リソース(担当者や担当チーム、設備、資材など)が競合する工程は並行に進めることができない」という前提を取り入れている点が特徴です。
クリティカルチェーンこそが全体のスループットに直結する要因であり、そこにボトルネック(制約条件)が見つかれば集中的に改善を実施します。


クリティカルチェーン法の概念

リードタイムが長くなる要因

著書「Critical Chain」では、プロジェクトのリードタイム(作業工程において始めから終わりまでにかかる所要時間)を長くしてしまう要因として下記のことを紹介しています。

要因 説明
悪いマルチタスク(Bad Multi-tasking) 悪いマルチタスクとは、プロジェクトの早期完了に役立たないマルチタスクのことです。
マルチタスクとは、あるタスクを中断して別のタスクを開始することであり、複数のタスクを掛け持ちして並行作業する状態を指します。
悪いマルチタスクはリソース競合を発生させて、プロジェクトの業務効率や生産性を低下させます。
学生症候群(student syndrome) 学生症候群とは、余裕時間があればあるほど、実際に作業を開始する時期を遅らせてしまうという、心理的行動特性のことです。
夏休みの宿題をギリギリになってからやり始めることは、学生症候群ととしてよく挙げられる例です。
学生症候群が発生すると、計画上は余裕時間が十分に取られていても、実際の作業は余裕のない状態で行うことになります。
早期完了の未報告
(パーキンソンの法則)
早期完了の未報告とは、ある作業が早期に完了しても、その完了報告はされないという、特性のことです。
早期に完了したことを報告すると、見積りの精度を疑われたり、次回以降の作業期間を短縮されるなどの不都合が起きます。
そのため、作業者は作業が早く終わっても報告せず、見直しをしたり、丁寧な仕上作業をして、予定の時間を使い切ることになります。

パーキンソンの法則とは、実際の作業内容や仕事量に関係なく、計画時に与えられた期間を全て使いきるように仕事を進めてしまう特性のことです。
パーキンソンの第一法則:「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」
パーキンソンの第二法則:「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」

ABP(Aggressive But Possible)とHP(Highly Possible)

ABPとHPはCCPM法において、スケジュールを見積もるときの考え方です。

ABPとは、直訳すれば「意欲的だが可能」を意味する通り、ぎりぎり遂行できる計画という意味になります。
全ての作業が順調に進んだ場合の見積もりであり、他作業の発生や再検討が発生した場合には達成不可能になるスケジュールです。
つまり、作業のバッファがほとんどに確保されていない状況です。

HPとは、直訳すれば「概ね可能」を意味する通り、余裕をもって完成できる計画という意味になります。
他作業の発生や再検討が発生しても、目的の作業を完了させることができるスケジュールです。
つまり、作業のバッファが十分に確保されている状況です。


プロジェクトバッファ(Project Buffer)と合流バッファ(Feeding Buffer)

CCPM法では、バッファマネジメントを行うことで、プロジェクト遂行効率を向上させます。

プロジェクトバッファとは、プロジェクトのクリティカルパスを守るために、クリティカルチェーンの最後に配置されるバッファのことです。
バッファを個別のタスクやアクティビティに持たせるのではなく、プロジェクトで管理することで、全体効率化を実現します。



合流バッファとは、クリティカルパス上にないタスクに対して、クリティカルパスへ合流する際に配置されるバッファのことです。
クリティカルパスに合流するタスクの完了時期に一定のバッファ持たせることで、クリティカルチェーンに遅れを生じさせないようにします。



CCPMの実施手順

ODSCの作成

ODSCとは、プロジェクトにおいて達成すべきゴールを定義する文書のことです。
それぞれは頭文字となっており、下記の意味となります。
・OはObjectives=目的
・DはDeliverables=成果物
・SCはSuccess Criteria=成功基準

目的、成果物、成功基準を明記して、プロジェクトメンバー内で共有します。
意味合いとしては、プロジェクト憲章を作成することと同じです。


CCPMの計画:クリティカルチェーンの特定とスケジュール計画の作成

CCPMでは、計画段階においてプロジェクトのクリティカルチェーンを特定して、スケジュール計画を作成します。

まずは、ネットワーク(プロジェクトスケジュールネットワーク図)を構築します。
この時点で各タスクやアクティビティの概算工数を見積ります。

そして、ネットワークを構築したら、クリティカルチェーンを特定します。
1.タスクごとのバッファを一定割合(例えば一律20%)でカットする。後ほどプロジェクトバッファとして追加する分です。
2.リソースの競合が起こっている場合、タスクの実行タイミングをずらして解消する。「山崩し」とも呼びます。
3.クリティカルチェーンを特定する。

最後に、スケジュール調整を実施して、正式なスケジュール計画を作成します。
・プロジェクトバッファをゴールの手前に挿入する。
・合流バッファを挿入する。
クリティカルチェーンがプロジェクトの予算・スケジュールに合わない場合には、タスクを外す、要員を増やすなど対応策を決めます。


CCPMの実行:バッファマネジメント

CCPMは、バッファ管理を行うことで、プロジェクトを管理します。
バッファの消費率を可視化するために、「傾向グラフ」を用います。
傾向グラフは、バッファの消費率の危険度ごとに、「緑:安全、黄:注意、赤:危険」と色分けしています。
プロジェクトは傾向グラフ確認して、バッファを回復させるための施策を検討・実施していきます。




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