品質マネジメント計画について

品質とは

品質とは

品質とは、ISO 9000において「対象に本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」と定義されています。
分かりやすく言えば、顧客の期待しているコト・モノ・サービスに対してどれほどの要望に答えることが出来たのか、という期待に対する充足度のことです。
つまり品質はコト・モノ・サービスの価値を表す「ものさし」となり、「顧客が満足する=品質が良い」という意味になります。


品質と等級(グレード)について

等級とは、「設計上で意図されるものであり、同一の用途であっても技術的特性が異なる成果物に定めた区分」のことです。
分かりやすく言えば、機能が高い/低い、量が多い/少ない、値段が高い/安いというモノやサービスに要求された特性を指します。

等級とは「受け手の期待」であり、品質とは「受け手の期待に対する充足度」を意味します。
例えば、格安レストランでの食事は等級が低いため、ある程度美味しければ品質が高いという評価となります。
対して、高級レストランでの食事は等級が高いため、値段に見合う味でなければ品質が低いという評価となります。

一般的に、期待が大きいほどそれを満たすことは困難となるため、等級が高いほど品質が低いという評価になる傾向があります。
したがって、品質の評価を高めるためには「等級=受け手の期待」を必要以上に上げないことも重要です。


ISO 9000シリーズとは

ISO9000シリーズとは、ISO(International Organization for Standardization)が定めた品質マネジメントシステムに関する国際規格群のことです。
1987年に制定され、2000年や2015年に規格改定されており、規格の統合などされています。

規格 説明
ISO 9000(ISO9000-1) 品質マネジメントシステムの基本概念や用語などを定義をしている規格です。
ISO 9001 品質マネジメントシステムの構築や運用をするための「要求事項」を規定した規格となります。
ISOにおける要求事項とは、ISO認証を取得した企業が実行すべき基本要件のことです。
2000年の改定によって、ISO 9002およびISO 9003と統合されています。
ISO 9004 ISO9004は既存の品質マネジメントシステムのパフォーマンスを改善していく為の規格です。
組織の品質経営についても記載があります。
ISO 19011 ISO 19011は、マネジメントシステム監査のための指針です。
内部監査及び二者監査(サブライヤー監査など)に焦点を当てています。
要求事項ではなくガイドライン規格となっています。

【備考】
・ISO/IEC 90003は、ISO 9001の要求事項をソフトウェアに適用するための指針です。
・JIS Q 9001:2015は、ISO9001を邦訳したもので、名称は「品質マネジメントシステム-要求事項」です。
・JIS X 25010:2013(システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE))は、ソフトウェア品質に関する規格です。


品質マネジメントについて

品質マネジメントと品質マネジメント計画について

品質マネジメントとは、プロジェクトにおけるプロセスや成果物の品質を管理するためのシステムや活動、監視ルールのことです。
プロジェクトの品質マネジメントを実施するために、品質マネジメント計画を策定します。

品質マネジメント計画では、まず顧客が要求する品質を把握して、「品質」を定義します。
次に、顧客の品質要求を確認できたら、「品質尺度」という品質の基準を定めます。
そして、品質尺度を達成するために、どのような方法で「品質保証」や「品質管理」を行うか定義します。


品質尺度(Quality Metrics)

品質尺度とは、成果物に求められる品質を評価・検証するための基準値のことです。
言い換えると、プロジェクトの品質をどうやって測定するかを具体的に定義したものです。
品質尺度は定量的に把握できることが求められ、例えばバグ検知数や欠陥率、テスト項目数など数値で把握できるものを採用します。


品質保証(Quality Assurance)と品質管理(Quality Control)

品質保証とは、完成した製品が品質尺度を満たしていることを保証するプロセスのことです。
つまり、成果物が既定の品質を維持しているかを確認する活動のことを指します。
品質保証は、製造時や出荷時だけでなく、納品後の製品状態についても管理し、顧客が満足できる品質の確保に努めます。

品質管理とは、品質基準が満たされているかを評価して、十分でなければ欠陥修正を実施させるプロセスのことです。
つまり、製品が一定の品質を保てるように生産工程を検査・検証・保証する活動のことを指します。
具体的には、製品の不良発生に関する分析、不良発生防止の施策の実施、工程の見直しなどを行い、製造プロセスの管理や改善を図ります。


品質コスト(COQ:Cost Of Quality)

品質コストとは、品質を確保するために発生する全てのコストのことです。
品質コストは、適合コストと不適合コストに分類されます。

適合コストとは、品質に適合するためのコスト、つまり製品やサービスを品質要求に合致させるためのコストです。
適合コストは、予防コストと評価コストに分類されます。

不適合コストとは、品質に不適合であるために発生したコスト、つまり不良品に対処するためのコストです。
不適合コストは内部不良コストと外部不良コストに詳細分類されます。



分類 説明
予防コスト 品質不良を発生させないための予防活動に伴うコスト
品質保証教育訓練費、品質計画費、レビュー費、設備保全費など
評価コスト 品質を評価し不良品を選別するための活動に伴うコスト
受入れ検査費、出荷前検査費、品質監査費など
内部不良コスト 出荷前に発見された不良品に伴い発生するコスト
補修費、廃棄費、(出荷前)プログラム不具合修正費など
外部不良コスト 出荷後に発見された不良品に伴い発生するコスト
クレーム調査費、損害賠償費、修繕費、製品回収費など

ソフトウェア品質特性

ソフトウェア品質特性とは、ソフトウェアの品質を評価する基準のことです。
かつては「JIS X 0129」が標準規格でしたが、2010年代以降、その後継規格である「JIS X 25010:2013」が標準規格となっています。

ISO/IEC9126(JIS X 0129)はソフトウェアの品質を評価する基準であり、機能性,信頼性,使用性,効率性,保守性,移植性の6つの特性と、それぞれの品質特性をさらに細分化した21の副特性が定められています。

JIS X 25010:2013(システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE:Systems and software Quality Requirements and Evaluation))は、システム及びソフトウェア製品の品質を評価する基準であり、ISO/IEC 25010を基にJIS X 0129の後継規格として標準化されたものです。
JIS X 25010では品質特性が、機能適合性、性能効率性、互換性、使用性、信頼性、セキュリティ、保守性、移植性の8つに拡張されています。


プロセスの評価と改善について

CMM(Capability Maturity Model:能力成熟度モデル)

CMMとは、ソフトウェア開発プロセスの成熟度評価モデルのことです。
組織の成熟度を5段階で表現しており、成熟度に応じて達成すべきゴールとプラクティスを定義しています。

CMMを簡単に言えば、プロジェクトチームの能力を向上するための指針といえます。
開発プロセスの不備が品質低下の原因となるため、プロセス改善を実施するために何をすべきか提示します。
品質を高めるためには、レベル4を目指す必要があります。

成熟度レベル 説明
レベル1
初期
ソフトウェアプロセスは不安定で、時には混沌としたものとされる。
ほとんどのプロセスは定義されておらず、成功は個人の努力に依存する。
レベル2
管理された
基本的なプロジェクト管理プロセスが確立され、コスト、スケジュール、機能充足性の確認が可能。
同様のプロジェクトに関しては、以前の成功経験を反復するプロセス規律がある。
レベル3
定義された
ソフトウェアプロセスが「組織の標準ソフトウェアプロセス」として文書化、標準化、そして統合化されている。
開発プロセスがテーラーリング(プロジェクトの性質に合わせて方法論を適用)されることで、他プロジェクトでも使用できる。
レベル4
定量的に管理された
ソフトウェアプロセスおよび成果物品質に関する詳細な計測結果が収集されている。
ソフトウェアプロセスと成果物は、定量的に理解され制御される。
レベル5
最適化している
継続的なプロセス改善が可能である。
革新的なアイディアや技術の試行、プロセスからの定量的フィードバックによって促進される。

CMMI(Capability Maturity Model Integration:能力熟成度モデル統合)

CMMIとは、1980年に発表されたCMMをベースにして発展した、総合的なフレームワークです。
CMMIはソフトウェア開発に留まらず、システムエンジニアリング、プロジェクト管理、買収、サービスなど、幅広い分野を網羅しています。

CMMIの成熟度レベルには、段階表現と連続表現という2種類の組織評価レベルがあります。
段階表現とは、CMMと同様に「初期/管理された/定義された/定量的に管理された/最適化している」と5段階で評価する表現です。
連続表現とは、22のPA(Process Area:プロセス領域)のプロセス能力を測定する時に用いる表現です。


SPA(Software Process Assessment)

SPAとは、ソフトウェアプロセスがどの程度標準化・定量化され、継続的に改善されているかを判定し、改善していくためのフレームワークです。
評価のための基準としてCMMが用いられます。
また、SPAの結果から実際にソフトウェアプロセス改善することをSPI(Software Process Improvement)といいます。


品質マネジメント計画書

品質マネジメント計画書とは

品質マネジメント計画書とは、「品質」とはなにかを定義して、品質を確保するための計画や手法を記述したものです。
プロジェクトにおける品質マネジメントの方向性を定める重要な文書となります。


テスト計画

テスト計画は、成果物のテスト方法、テスト範囲、テスト観点、障害発生時の対応方針、および構成管理方法などを定義することです。
テスト計画も品質マネジメント計画に含まれる計画です。


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